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純真メランコリー 43
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しばらくの沈黙の後、綾世が口を開いた。
「僕の母親は、櫻木の家を捨てた……」
「え…?」
「事故で両親が死んで、行き場がなかった僕をお祖父さんが仕方なく引き取ったんだ……」
「…………」
「僕が居るせいで、お祖父さんはしなくてもいい苦労をしてきたんだと思う…」
「しなくてもいい苦労って…!?」
「本当なら、道場は弟子に任せて悠々自適に過ごせていたんじゃないかと思うんだ。子供一人を育てるのは、体力的にも経済的にも、大変なはずだ。僕は…お祖父さんにとって大きな負担なんだ……」
綾世は自分の事をずっとそんな風に思っていたのか……?
でも、綾世が抱くその想いと祖父さんの綾世に対する想いは、全く違うような気がする。
颯斗に綾世のことを話す時の祖父さんは、本当に"親バカ"ならぬ"祖父バカ"だ。
絶対、仕方なく面倒をみているとは思えない。
綾世の存在が負担になっているなんて様子は微塵もない。
「あのさ、綾世…」
「それは違うっ!」
「ぅわっ!」
いきなり後ろからの声で会話を遮られて驚く。
振り向くと、すらっと背の高い、見た目20代前半位の長髪の女が立っていた。
ばっちりメイクをしたスーツ姿。
人が近づいて来た気配なんてちっとも気が付かなかった。
この人、誰だ?!
綾世は彼女に視線を向けたけれど、黙ったままだ。
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