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純真メランコリー 48
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覗き込むと、いつもきちんと片付いている居間が、少々散らかっていた。
と、言っても。
幹家の、まあまあ片付いている状態よりはましではある。
「荒れててごめん。すぐ、片づける。…お祖父さんの保険証とか健康手帳とか、いつも置いてる場所は分かってるはずだったのに、慌てて探して…」
開けっ放しのいくつかの箪笥の引き出しを、綾世が忙しく閉めて回る。
「畳んでいた洗濯物も蹴散らしちゃったり……」
そう言って、散乱した衣服の山の前に座り込んで動きを止めた。
「情けない……」
颯斗に背を向けて俯いていたので、呟いた綾世の顔は見えなかった。
けど、声で落ち込んでいるのだということは察しがついた。
颯斗はその後ろ姿に近づいてしゃがむと、綾世の柔らかい栗色の癖毛を撫でる。
「そりゃ、家族が倒れたら誰でもそうだって」
「………」
「立ち尽くして何も出来なかったって聞いてたけど、綾世さんはちゃんと病院に行く準備したんじゃん。すごいよ!」
「………」
俯いたまま、綾世は何も言わない。
もし綾世一人だったら、ずっとこのまま動けずに座り込んでしまったままだったかもしれない…。
何の役にも立たなかった…。と、自分を責めながら……。
今、ここに居て良かったと思う。
「立派!立派!! なーに落ち込んでんだか、訳わかんねぇ!」
黙りこくった綾世の頭を、ツッコミを入れる様に軽く叩いた。
「いった…」
叩かれた頭に手を当てて、綾世が呟いた。
反応があったことに、少し安心する。
「さぁて!俺、客間だっけ?布団敷いてもいいよな?」
颯斗はわざと明るい調子で言って、廊下を客間へと向かった。
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