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純真メランコリー 60
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「綾世は…自分が皆の迷惑になってるのだと、思い込んでいます。なんで誰も、何も言ってあげないんですか?!」
ほんの少しためらいの沈黙があって、響さんが言った。
「幹君には…話してしまってもいいのかな…。綾のことを……」
響さんの声の調子が、低く小さくなる。
あまり、いい事ではなさそうだ…。
でも……!
「俺!綾世のことだったら、何でも知りたいです!!」
「………」
「知って…俺に出来ることがあるのなら、力になりたいです!!」
電話の向こうで、響さんが大きく息を吐いた。
そして、静かに話し始める。
「…綾は…お祖父ちゃんにとって、娘の大切な忘れ形見なの」
「綾世の両親が亡くなってることは、聞いています」
「うん。……綾の母親…巴(トモエ)さんは、駆け落ちしたのよ……」
「え……?」
ああ…綾世が『母親は櫻木家を捨てた』と言っていたのは、そういうことだったのか…。
「綾を見れば分かる通り、綾の父親は日本人じゃない。ハーフだった。日本の文化を学ぶために櫻木の道場を訪れたらしいわ。そして巴さんと恋をして、やがて二人は結婚を考えるようになった…」
「………」
颯斗は、傍らに静かに眠る綾世を感じながら、響さんの話を少しも聞き落とすことが無いように携帯を耳に押し当てる。
「でも…お祖父ちゃんが反対したの。うちの母はすでに結婚していたから、巴さんが櫻木の家を継がなきゃならなかった。お祖父ちゃんは日本の伝統武道を継ぐ家系に、ハーフの…綾の父親の血が交じるのを嫌った」
「………」
よく解らないけれど……日本文化を継ぐ家系ならば、そういうことは、とても大きな問題で…障害になるのかもしれない。
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