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純真メランコリー 66
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綾世が寝ている部屋に戻ると、また一人、よからぬ想像でテンパりかねないので、そのまま1階の台所へ向かう。
「腹減った……」
昨日は夕食の賄を食べている途中で病院へ向かい、その後は何も口にしていない。
育ち盛りの颯斗にしてみれば、そんなんじゃ身が持たない…。
空腹を意識し始めると、そのことばかりに頭が働く。
櫻木家に遊びに来ると、いろいろと忙しい綾世に代わって時々颯斗が料理の腕を振るうようになっていた。
腕を振るうと言っても、賄で食べるような炒飯や中華丼みたいな簡単なものしか作れない。
けれど、小学生の低学年ですでに中華鍋を握り、たまに家族のご飯を任されていた颯斗の作る代物は美味しいらしく随分と喜ばれた。
綾世の作る料理は和食中心だから、家庭で中華ってのが珍しくてなおさらなのかもしれないけれど…。
炊飯器のご飯と冷蔵庫の中身をチェックし、材料を取り出す。
あり合わせの鮭と卵とレタスで炒飯を作ることにした。
勝手知ったるなんとやら……。
手際よく調理していると、綾世が慌てて台所に現われた。
「ごめん颯斗!寝坊した」
随分と慌てて飛び起きて来たのだろう、綾世の癖毛がもっさりといつもの2倍になっている。
身なりをきちんと整えた姿しか見たことが無かったから、なんだか新鮮だ。
あとはもう盛り付けるだけの鍋の火を止める。
颯斗の横に立つ綾世の顔を見て思わず頬が緩む。
「…なに?」
こんな気の抜けた綾世の姿なんて、きっとそうそう見れないだろうな…。
ニッと笑って頭をぐちゃぐちゃにかき回してやる。
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