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純真メランコリー 72
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「祖父さん、あのさ……。この際、そういうのはどうでもいいよ。祖父さんのせいとか、誰かのせいとか言いたいんじゃない。ただ……祖父さんが、…皆が、綾世をどれだけ想っているかってことを、ちゃんと教えてやってよ!…どうにかしたいけど、俺じゃ、どうしようもないんだ……だから、だから頼むよっ!!」
そう言って、頭を下げる。
そうしてもらうことで、どれだけ綾世が大切に想われているのか、気が付いて欲しい。
ドサッっと、廊下でした大きな物音に、みんなが一斉に出入口に視線を向けた。
「綾世……!」
そこには、唖然とした綾世が立っていた。
聞かれた……?
どっから聞かれてたんだ!?
「酷い…話すなんて……」
いつもより低い綾世の声。
颯斗は慌てて立ち上がり、傍へ駆け寄る。
「綾世さん!!でも……」
「黙れっ!」
眉根を寄せ潤んだ瞳で颯斗を睨む綾世は、怒っているのだけれど……泣き出してしまいそうにも見える表情をしている。
こんなに怒りの感情を顕にする綾世を、以前にも見た気がする…。
職員室前でマークさんと一緒だった時…?
いや、ちがう……。
あの時は泣きそうな顔ではなかった。
じゃぁ、いつだった?
「綾世……!!」
とにかく落ち着かせようと掴んだ腕を、勢よく振りほどかれる。
「……颯斗だから話した…のに……お前、最低だっ!」
こんなにも声を荒げる綾世なんて初めてだ……。
綾世は一度ゆっくりと瞬きをすると、ガラスのように感情の感じられない瞳で颯斗を一瞥した。
「…………!!」
一瞬で出来た壁。
その冷たい表情に言葉を失った颯斗の横を通り、綾世は足早に廊下を奥へ向かう。
何事かと台所から顔を出した律基が、綾世に声を掛けたけれど、聞こえていないかの様にそれには応えず、2階への階段を駆け上がって行った。
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