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純真メランコリー 80
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「違うくないっ!俺、ずっと綾世のこと『好きだ!』って、言ってんじゃん!!」
力むあまり、自分でも驚くような大きな声が出た。
颯斗の声に、大きく目を見開いて驚いた表情を見せた綾世が真っ赤なる。
そして、まっすぐに向けた颯斗の視線から顔を背けた。
……えぇっ!?
なんだよ、その反応!!
言わせといて、そっちが照れんのかよっ!
颯斗の顔も一気に熱を持つ。
でも、学生ホールが薄暗いのと颯斗が色黒なので、綾世ほどはわかりやすくないはずだ。
颯斗は、目の前の綾世から視線を逸らせなくなった。
……また、こんな風に二人で話ができるなんて………。
颯斗のしたことは、決して間違いではないのだと思いながらも、信用を裏切ってしまった事への綾世の怒りと悲しみを考えると……もぅ、許してもらえないのではないかと思っていた。
「僕は…もっと颯斗のことを知らなきゃいけない……」
綾世が独り言のように、ボソリと呟いた。
でも、颯斗はその小さな声を聞き逃さなかった。
それって…!!
綾世にとっても、颯斗が"大切な人"だってこと…?!
地獄の底から一気に昇天したような状況に、颯斗自身泣きたいのか笑いたいのか感情が混乱している。
耳まで赤くした綾世が、ふいと視線を上げた。
食い入るように綾世を見つめていた颯斗と視線が重なる。
綾世の大きな瞳が細められ、唇の口角が上がった。
「…颯斗。ありがとう」
颯斗に向けて、綾世がはにかんだ笑顔を見せた。
それは、ものすごく自然で…見惚れるほどに綺麗な微笑み。
自分でも嫌になるほど単純だと思うけれど…。
その一言と綾世の笑顔で、今までのすべて、何もかもが報われた気がした。
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