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想い14
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無言で歩き、たどり着いたのは駅前の交差点。
そこには、ワタルが居た。
その足元にリクが行儀よく座っている。
「…ワタル。リクの散歩?」
俺の質問に、ワタルは辛そうな顔で笑った。
「違うよ。呼ばれたんだよ…君に」
「え…?」
呼ばれた…? 俺に!?
「…あんた誰だよ?」
コースケがワタルに不信顔で訪ねた。
「こんにちは。君が『コースケ』君だね」
「は?あんた、なんで俺の名前知ってんだ!?」
「コースケ君…足元、気が付いてる?」
言われて、コースケは視線を落とした。
横断歩道の信号機の柱。
その付け根に、花束とお菓子やドックフードが供えられている。
「…なんだよ……これ?」
「これに見覚えはない?」
ワタルは、そこに置かれた靴ひもが結ばれた鈴を指差した。
「これ…あいつの!!」
コースケがワンコの首輪に付けた鈴。
元々は、小学生の時にコースケがランドセルに付けていた物だった。
ワンコがそれをえらく気に入っていたから、小学校卒業後にコースケが首輪に付けた。
毎度毎度噛んで、すぐにボロボロにされるスニーカー。
そのスニーカーの丈夫な靴ひもで、首輪に結び付けたんだ。
「8月25日の夕方。この横断歩道で車に轢かれそうになった子供を助けて、撥ねられた犬がいた」
「……」
「その日の午前中、駅に向かう僕が通り掛かった時…その犬はそこに座ってた」
コースケは黙ってワタルの話を聞いている。
「夕方、電車で帰ってきた時にもまだ居て……きっと飼い主を待ってる賢い忠犬なんだと関心した。でも横断歩道を渡ろうとした時、交差点に車が突っ込んで来て…目の前で子供が轢かれそうになった。その瞬間、その犬が飛び出して子供を突き飛ばすような形になって…犬だけが撥ねられた」
「………」
コースケの顔が強張る。
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