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想い15
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「僕は目撃者として警察に事情を訊かれ…。気が付いた時には、犬は運ばれしまっていて…その鈴が事故現場に落ちてた。朝すれ違った時、首輪に鈴が付いてたのに見覚えがあったから…もし、飼い主がここを訪れることがあったら気が付いてもらえるかもと思って、僕がそこに置いたんだ」
コースケが跪いて、そのずずを手に取った。
歪な形に歪んだ鈴は、それでも「チリン」と小さく鳴った。
「8月25日は合宿の中日で…俺、駅には来なかった……」
「そうか…。だから…事故があったことも、コースケ君はずっと知らなかったんだね。いつも、お迎えに来てたの?」
ワタルの質問にコースケが大きく頭を振った。
「違う…。電車で帰って来る試合の時に、雨がひどく降ってて母さんと何度か迎えに来てたことがあったくらい…。本当に…本当にごくたまにだった……」
コースケとワタルの間に立つ俺は、ゆっくりと口を開く。
「前の日コースケが帰って来なかったから…、あの日はここに迎えに来たら会えると思ったんだ…」
呟いた俺に、ワタルは優しい目を向け頷き、コースケへ言う。
「あの日もコースケ君を待ってたんだよ」
「…え?」
コースケは訝しい顔で、下からワタルの顔を見上げている。
「昔…コースケも車に轢かれそうになって……咄嗟にあの時のことを思い出して……『助けなきゃ!コースケ!!』って走り出してた……」
コースケが食い入るようにワタルの顔を見ている。
ワタルの視線が、俺からコースケに向けられた。
「…子供が轢かれそうになった時、昔コースケ君が事故に遭いそうになった時のことを思い出して…子供の頃のコースケ君と轢かれそうになった子供が重なって混乱したみたいだよ」
「は?あんた何言ってるんだよ!?…俺、確かに小学校の時、事故に遭いかけたことあるけど…なんでそんなこと知ってるんだよ!?」
コースケは訝し気な、困惑した顔をしている。
「だって…今、彼がそう言ってるから…」
「はぁ!?…今?」
ワタルが俺へ向ける視線を追って、コースケも俺の方を見る。
けれど、その瞳に俺は映らない。
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