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想い17
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コースケが、涙でぐしゃぐしゃの顔で必死に周りを見回している。
こんなに傍に居るのに…コースケには視えていないし、触れてももらえない。
こんなに傍に居るのに…もぅコースケを護ってあげられない。何もしてあげられない…。
ここを去ること…コースケから離れること……。
今の俺が、コースケを護るために出来ることは…それしかない。
リクが「クゥ~ン…クゥ~ン…」と、俺に同情するように、寂しく鳴いた。
まるで、悲しみを代弁してくれているようだった。
俺はコースケの前にしゃがみ込んだ。
そして、コースケの唇を舐める。
その瞬間、コースケが両手で自分の口を押さえた。
「…なに?今の感触…!?ヤマトか!?」
えっ!?
コースケ? 俺がわかるの!?
初めてコースケと唇を重ねたのは、俺がまだ生まれて数ヶ月の子犬だった頃。
新しい環境に不安だった俺を、コースケは抱き上げて、『可愛いなー』って言いながらチューしてくれた。
それからはいつも一緒で、コースケの傍に居るのが当たり前になった。
子供だった頃は、コースケの口の周りに付いた菓子くずが欲しくて、よく顔中をベロベロ舐め回した。
そのうち、コースケが咥えているアイスなんかを横から奪ったりして…コースケはそれを面白がって、食べ物を口移しでくれるようなこともよくあった。
頭を撫でられるのも、触れられ、抱きしめられるのも大好きだった。
「ヤマト!ヤマトォ!!」
コースケが泣きながら俺を呼ぶ。
俺の世界には常にコースケが居て、コースケは俺にとって特別な存在で、俺の…総てだった。
泣き続けるコースケを強く抱きしめる。
大好きな、コースケの匂い。
不意にコースケは、だらりと下げていた両腕を胸のあたりまで上げ、何かを包むように腕を丸めた。
その、腕の中に俺は居た。
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