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「なー、ジニョンイの家教えてよ」
「え? やだよ」
「なんで?」
「教えたら来るでしょ」
「んー、てかさ、なんでいっちゃダメなの? だめならうち来てよ。俺に会いたくない?」
「え?」
マクヒョンに会いたくないのかって聞かれて。
数秒、思考が停止した。
「え、分かんない」
「ひど」
ほんとに分からなかった。
ちょっと考えてみても、マクヒョンに会いたいとか会いたくないとか。
だって、いつもそばに居たし、会いたいから会う、とか、待ち合わせるとか、予定を合わせるとか。
そんな風な選択は、今までした事がなかったから。なんていうか、僕の思考回路に、組み込まれていない。そんな感じ。
だけど不思議と、マクヒョンの声を聞いてなんだかホッとしてる。
毎日現場で気を張ってるから。家族と久しぶりに話した、そんな感覚?
「マジで冷たい、ジニョンイ」
「え、そういう意味じゃなくて。てか、明日会うでしょ? なんでそんなこだわるの? てか、マクヒョンは僕に会いたいの?」
今までにも、何度もマクヒョンに家を教えろって言われたことがある。だけどそれは、僕の家がどんな風なのか、単純に興味があるんだろうって思ってた。
「会いたくないのに、家に行くとか来いとか言うわけないじゃん」
「え、あ、そか、うん……暇なの?」
マクヒョンは、僕に会いたいんだ。
「え? まあ、yeah〜」
突然電話の声が遠くなって、英語で話すのが聞こえてきた。
「誰か一緒なの?」
「ん? 友達。アメリカから来てる」
「そうなんだ……」
よく分からないけど、その瞬間。なぜかすごくガッカリした。
僕に会いたい、なんて言うから。しつこく誘うから。マクヒョンは寂しくて僕に会いたいのかなって、思った。
マクヒョンが部屋でひとり膝を抱えてるような、そんな様子すら頭に浮かべてた。
会いたいって言われて、ちょっと、心の奥底で優越感を感じてたかもしれない。
だけど実際、ひとりなのは僕の方だった。
「友達がいるくせに、僕んちに来ようとしたの?」
「え? 友達、俺がいなくても大丈夫だし。しばらくここに住んでる感じ。そんなの気にしない関係なんだ」
そうだとしても、友達を放ったらかしてここに来たいなんて、やっぱり変だと思うんだけど。
「マクヒョンの家に行って、英語話す元気ない」
「あー、それはそうかもね。ごめん、誘って」
「や、ううん」
マクヒョンが急に謝るから、調子が狂う。
「だから俺が行くってば」
「なにそれ、」
打たれ強いというか、なんていうか。
「簡単じゃん、カトクで位置情報送ってくれればいいよ、そしたら俺タクシーであっという間に行くよ」
それは、作業工程は簡単だけど。そういうことじゃなくて。
「僕の部屋に来たって面白いことないよ、なんにもないし、マクヒョンの家みたいにゴージャスじゃないし」
「ゴージャスって」
そう言うとくすくす笑う。
実際、インテリアコーディネーターに作ってもらったマクヒョンの綺麗な部屋と比べたら、僕のは、同世代の学生の部屋と変わらないと思う。
「何にもないことないし」
「え?」
「ジニョンイがいるじゃん」
「は?」
「ジニョンイに会いたくてジニョンイの部屋に行くのに、他になにがいるの? あ、飲み物とか食べ物とかDVDとか? 欲しいなら持ってくよ」
「や、うん……マクヒョン、僕のこと口説いてんの?」
「え? なに」
そう言うと、また楽しそうにキャキャって笑う。
「あー、そう聞こえた? ならそうなのかも?」
そう言いながらまだ笑ってる。
ごくごく普通に、よくあんな甘いこと言えるなって思う。
僕が女の子だったら、きっとドキドキしてすぐにマクヒョンに来てって言ったはずだ。
女の子でなくても、ちょっと嬉しくなったし。
「シンクンしちゃった?」
「してないし」
まだくすくす笑ってる。
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