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始まりの朝
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その日はいつも通りの朝だった。
携帯のアラームで目を覚まし、制服に着替えて顔を洗って朝食を作り始めて…。
この広い家で弟と2人暮らしをしてもう3年が経っていた。父親は単身赴任で海外へ。母親は俺が小学生の頃、つまり隼人が産まれて間もない頃に交通事故で亡くなってしまった。
その時の光景は忘れてしまいたいが、よく覚えている。
母親と俺と隼人の3人での買い物の帰り道、母親が買い物服を持ち、俺が隼人を乗せたベビーカーを押して横断歩道を渡ろうとしていた時に自動車が……。
不意に、頬を冷たいものが流れた。ああ、まただ。
母親の最期を思い出す度、涙が出てくる。あの時、俺が買い物袋を持っていれば母親は助かったんじゃないか。あの道を通らずに帰っていれば今頃は家族全員でこの家に住んでいたのではないか、と。
今でも鮮明に、あの日のことを思い出してしまう。
母親の悲痛な叫び声、車がぶつかった時の音、目の前で飛び散る血、ガラス片。
こんなに辛いことは思い出したくないが、かといって忘れたくもない。
ドラマか何かのセリフで、人が本当に死ぬのは、人に忘れられた時だと聞いたことがあるから。
その通りだと思った。この先何度思い出しても、何度涙を流しても決して忘れるとこはない。だって、母親が本当に死んでしまうから。
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