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05.賑やかな客
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「そうか。それならいい。近くにいるんだし。またこうして会えるといいな。今度は、山崎も一緒に」
「いいの?」
「あいつとも久しぶりに話してみたい。病院では何しているんだ?」
「山は、薬剤師だよ。先日会ったことを話したら、山も十文字に会いたいって言っていた」
「そっか。じゃあ、ここであの当時の同窓会でもしようか。小針くんとかも呼んで……」
そこで、様子を見ていた石田が口を挟む。
「小針は出入り禁止だ」
「なんで?」
「いいじゃない」
「無理、無理。あいつは無理。それに、あいつの噂をしていると……」
そこまで言うと、カランカランと来店の鐘が鳴って、黒縁眼鏡のスーツ姿の男が顔を出す。
「おっす、来てやったぞ~」
「ほらみろ!勘弁してくれ!こいつの話をすると絶対に来るから嫌なんだ!!」
いつもは、穏やかな石田が、これでもかと嫌な顔をする。
「なに?なに?おれの話?」
小針は、にこやかにそう言うと、石田の話し相手を確認しようと視線を向ける。
「あれ?」
「小針」
拓は、微笑む。
「ひ、拓!?まじで?やだ。なんで?」
彼は、嬉しそうに拓に抱き着く。
「苦しいよ」
「こら、だめ!」
十文字は、必死に引きはがしにかかる。
恋人の山崎に触れられるならまだしも。
こいつは、許されない。
そう思うのだ。
「おお、おお。今日はいつもより嬉しい騒ぎだね~」
後ろからついてきた男は、にこにこと小針たちの惨事を眺める。
「菜花さん、こいつ何とかしてくださいよ」
石田が頼むが、「微笑ましい光景じゃない」と笑う。
十文字は、菜花を見て目を見張った。
確か。
県の担当者。
保住や田口とよく行く県庁で話をする男だ。
こんなところで出会うなんて。
彼は、あまり気が付いていないようだが。
珍しい名前と、雰囲気が特徴的で記憶にとどまっている。
これは強制的に終わらせるしかない。
そう判断した石田は、小針の頭にげんこつをくらわせた。
「痛!」
「人の店で騒ぐな。追い出すぞ」
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