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17.恍惚感*
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十文字に誘われるように手を引かれて、そのまま応接セットのソファに組み敷かれた。
十文字は長身な割に肉厚がないので、そうずっしりとした感覚はないが、それでも骨太な感じがして、自分の相手は男性であると自覚した。
骨張った指が、天沼のワイシャツのボタンを外す様をじっと見ていると、なんだかそれだけで胸がドキドキしてきて、息が上がりそうだ。
「ねえ、期待しているでしょう?」
意地悪に見下ろしてくる視線を受けて、「違う」と否定しようと頭では考えているのに、それがなかなか声に出せないのは、肯定だからなのだろうか?
視線を伏せてそれに応えると、十文字は顔を赤くした。
「ちょ、それ。わざと? 天沼さん」
「え! だ、だって、なんて答えたらいいのか……」
「いやいや。十分それが答えってわけでしょう?」
「な、なにを……はっう!」
抗議の声をあげようと開いた唇を持っていかれる。
十文字は余裕がなさそうに、最初から貪るように口付けてくるのだ。
思わず押し返そうと、彼の肩に手を添えると、逆にそれを掴まれて椅子に張り付けられるような格好にされた。
「あっ……んっ! んんッ」
声を上げようとすればするほど、それは甘い嬌声にしかならない。
――十文字の味がする……。
甘ったるい唾液の味だ。
唾液には色々な種類があると聞く。
サラサラしたものもあれば、ドロドロしたものもあるって……。
――キスをするときはどんな種類の唾液なのだろうか?
口角から流れ落ちるそれはサラサラしている気もするが……口内で絡まり合う舌に潤いを与えるものは、ドロドロとした唾液に違いないと、天沼はそんな別なことを考えていた。
しかし、それはすぐにかき消される。
クチュクチュと音を立てて交わされる口付けばかりに気を取られるわけにいかなくなったからだ。
天沼を拘束している手とは反対の右手が、彼の脇腹を撫でたからだ。
「ふっ、……んん」
――くすぐったいから、やめて!
しかしそれは叶わない。
相変わらずのキスの応酬に、時たま息をし、声を上げるので、精一杯だからだ。
体を捩り、十文字の下から抜け出したい。
もぞもぞと体を動かそうとしているのに、思うようにいかなかった。
「ねえ、天沼さん。おれ、誘われてるみたい」
――いやいや! 誘っているのは十文字でしょう!?
抗議したい。
したいのだが――。
彼は唇を離すと、さっさと天沼のベルトを外してから手を差し込んできた。
「ひゃあ!」
「いつもどうするの? 仕事で忙しいのに。抜く時間あるの?」
「や……っ、十文字……」
「三月までおれとしていたセックス覚えてる? ちゃんと思い出してくれている?」
「そ、それは――ッ、は……んっ」
会話を続けながら、指で根本から撫で上げてくる十文字の瞳からは逃れられない。
目元を熱くして、恥ずかしい気持ちでいっぱいなのに、情欲の色が浮かぶ彼の視線から目を逸らすことができないのだ。
「気持ちいいんでしょう? うっとりとしているみたい」
「ち、違――つッ、十文字の……意地悪」
「意地悪したくもなるでしょ? いじめてほしいって顔に書いてあるよ」
「そんな、こと……はっ……やだ。なにこれ……」
――気持ちがいい。
正直、忙しさと疲労で自慰行為をする時間も気力もなかったというのが本当のところ。
ずっと溜まり切っていたものが、倍増して脳を刺激してくるのか?
「出ちゃう……っ」
「もう? 早すぎない?」
「だ、だって……ッ、やだっ、ダメ……っ」
目の前が霞んでよくわからなくなってきた。
すると、ふと快楽が止まる。
――嘘でしょ? 出させてよ。
十文字に縋るように視線を向けると、彼は体を起こしていた。
――終わり、なの?
そんな不安に駆られた瞬間。
天沼の細い腰を両手で引き寄せたかと思うと、自分の上にまたがせた。
「ねえ、上下逆もよくない? 天沼さんが上ね」
「え! え、あの」
彼の顔を上から見下ろすが冗談ではないらしい。
「ほら、早くしないと守衛さんに見つかるよ」
「で、でも……」
「女性と経験あるんでしょう? いつもの眺めじゃない」
「そういう問題!?」
臀部に当たる十文字を感じて顔が熱くなった。
「天沼さんが入れてみてよ。自分で」
「――へ、変態っ!」
「えー。そんなのひどい。ほら。おれ我慢できないよ」
熱くなって硬く大きなものは天沼の肌にヒタヒタと当たる。
「もうっ!」
十文字の肩に両手を当てて、それからそっと腰を浮かせる。
「ねぇ、ちょ……うまくなんてできないよ。女性じゃないし……」
もぞもぞと腰を動かして、彼を受け入れようと苦戦するが、到底それはできそうにもなかった。
「やっぱり、無茶だよ……」
そう言いかけたかどうか。
天沼は曖昧だ。
なにせ、無理矢理彼が押し入ってきたからだ。
「やっ――ッ」
久しぶりに肉を割って入ってくる十文字は大きすぎる。
頭のてっぺんまで何かに貫かれたかのような感覚に、一瞬、頭が真っ白になった。
しかし、我に返ると十文字が体内に入り込んでグチグチと粘膜を擦り上げる音が耳についた。
「はぁ……あ、んっ、痛い……十文字……っ」
「気持ちいい。天沼さん。天沼さんの体重が掛かって……すごい、根元まで入る……っ」
「お腹の中が苦しいよ」
「おれも。キツい。……でも、ヤバい。こんなの初めて」
腰を支えてくれる十文字の腕が熱い。
彼の腰が揺れるたびに与えられるビリビリとした感覚に意識が持っていかれそうだ。
「ねえ、キスして」
ねだるように囁く彼の言葉通り、体を屈めて自分からキスをする。
十文字の口に舌を差し入れ、丁寧に舐め上げると、彼の腰の動きが激しさを増す。
――おちおちキスなんてできないじゃない!
唇を離し、ソファに腕をつく。
下から突き上げられる刺激に、姿勢を保つので精一杯だ。
「あ――ああ……、あっ、あっ……ん……」
「だめ、出る。ゴムないから……はっ、はっ、中出すよ」
「十文字……っ、あ……ッ」
先程、十文字の刺激で溢れていた先が、彼のお腹で擦りあげられてあっという間に白濁の液を溢した。
「あっ、んん――」
――こんなのって、ない!!
理性はそう叫んでいるのに。
こんな場所で。
ありえないのに。
身体は十文字を求める。
自分の中に出された熱いものを感じて肩で大きく息を吐いた。
――好き。十文字が好きなんだ。この満たされる恍惚感はなんだ?
緊張が緩み、体外に出て行く彼が愛おしい。
天沼は十文字の頬を撫でた。
そして、それから彼の唇にキスを落とす。
脱力した十文字は、嬉しそうに笑みを浮かべてから、天沼の後頭部に手を回してキスを受け入れた。
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