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気がついた時には、病院のベッドの上だった。
「桜井さん、大丈夫?」
同じパート仲間が側に居てくれて、慌てて縋った。
「む、娘を幼稚園に迎えに行かないといけないの!」
くらりときた。
頭の奥が痛んで、ベッドに横になった。
「さっき、幼稚園から電話があったの。園長先生にお話したら、さっちゃんさんに連絡しますって。」
ホッとした。
杉さんなら、ちゃんと美湖のことを見てくれる。
「良かった・・・。ごめんなさい、私・・・。」
「気にしないで。さっきまで店長が居たんだけど、男性だし、帰ってもらったの。」
悪戯っぽく言われて、私も微笑んだ。
「看護師さん呼ぶけど、良い?」
「ええ、お願いします。」
点滴と、おしっこの管が繋がっていた。
窓の外を見ると、外は薄暗くなっていた。
「今、何時かしら。」
「えっと・・・6時よ。あ、携帯の電源切れちゃったから、充電したの。返すわね。」
「何から何まで、ごめんなさい。」
電源を入れると、不在着信がたくさん入ってきた。
「桜井さん、体調はどうですか?」
看護師さんと続けてお医者さんがカーテンから入ってこられて、着信が気になりつつ携帯を置いた。
「はい、大丈夫です。」
内科的な検査を、明日の朝から開始すると言われた。
「えっと、帰れませんか?」
「今日は安静にする必要があります。」
「娘がいるんです。」
訴えたが、無理だった。
「桜井さん、この機会にちゃんと体を調べてもらおう?」
私の最近の体調不良に気付いていた彼女は、畳み掛けるように言った。
「仕事は、待ってくれる。」
多分、疲労の蓄積だと思う。
休息を取ったら治るはずなのに・・・。
ひとり親家族等医療費助成制度があるから、医療費はかからない。
だけど、美湖と離れることと仕事を休むことに抵抗があった。
「じゃあ、私も子どもの迎えがあるから今日は帰るわね。」
「お世話かけました。」
みんな出て行って静かになった病室で、携帯を確認した。
風見さんと、幼稚園からだわ。
でも、先に。
「もしもし、杉さん。」
美湖の様子を確認させてください。
心の中で、風見さんへ手を合わせた。
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