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風見さんが荷物を持って行ってくれた。
帰りは渋滞にハマったそうで、マンションに到着したのは22時を過ぎていた。
小夜は風見に消化に良さそうな食事を出しながら、ベッドに寝かせた美湖ちゃんを起こさないように、ヒソヒソと話をした。
「顔色は悪かったけど、受け答えもしっかりしていたし、外見上は問題無さそうだったよ。」
「良かった。明日のお昼頃に退院できるって聞いてたけど、今のところは変わらないんだよね?」
冷たいお茶の入ったグラスを静かに置いた風見さんは、ゆっくりと首を傾げた。
「何も言ってなかったからね。」
「んー・・・。」
と、なると。
小夜は顎に手をやって考えた。
と、なると、明日、お昼頃に退院して、美湖ちゃんを幼稚園にお迎えに行ってから帰ってくるんだよね。
果たして、ゆっくり休めるだろうか。
他の子よりも聞き分けが良くて、優しい良い子ではあるけれど、子どものパワーは底無しだ。
結局、病院で寝ていた方が静養が出来るっていう感じにならないかな。
「ねぇ、暁さん。」
「・・・いいよ。」
ん?
「何が?」
唐突の同意に、きょとんとした。
「美湖ちゃんを明日も預かるって話だろ?くたっくたにさせて、寝たところで帰そうか。」
ふふ。
「さすが暁さん。全部、察してた。」
顔を見合わせて、ひっそりと笑った。
「小夜の思うようにしていいよ。でも、美湖ちゃんを預かるなら、はなれのアルバイトは行けなくなるからね。」
だよね。
美湖ちゃんを、この部屋でひとりにするわけにはいかない。
最近、わがままばかりさせてもらっている。
はなれも、おじさんの事務所も。
心苦しいけれど、美湖ちゃんと天秤にかけたら、美湖ちゃんを取ってしまう。
もう来なくていい。なんてことは、両方とも言わないだろうけれど、迷惑を掛けている自覚があるだけに胸が痛んだ。
中途半端な自分。
大人になっているのに、大人になれていない。
まわりをみると、立派に自分で立っている人ばかりだ。
落ち込みそう・・・。
「さーや。どうした?」
「うん、ちょっと落ち込んだ。」
抱きしめてもらって、ちょっと落ち着いた。
「いまの小夜の仕事は?」
「・・・勉強すること。」
鼻を摘まれた。
「あとは?」
「ふぁと?」
勉強すること以外?
「んー・・・。」
風見さんの鼻も摘んだ。
「ふぇがおでいることだよ。」
ふふ。
「ふぇがおなの?」
笑顔でいることが、仕事かぁ。
予想外の答えに肩の力が抜けた。
「そんな簡単なことでいいの?」
「小夜、笑顔でいるって大変なんだぞ?」
そんなことない。
風見さんと一緒だったら、いつでも笑顔になれる。
「じゃあ、100点満点の笑顔でいれるよう頑張るね?」
「うん、小夜が毎日楽しく過ごせるように、俺も頑張るからね。」
ギュッと抱き合った。
そうだね、笑顔でいなくちゃ。
美湖ちゃんも不安になる。
そして、美湖ちゃんのお母さんにも元気な笑顔で笑って欲しい。
しかめっ面してたら、みんなが笑顔になれない。
アルバイトのことは後でちゃんと謝ることにして、小夜は風見の胸の中で愛情の充電をした。
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