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ふたりで過ごす時間は、何というか、居心地が良かった。
変に気負わずに、自然体のままで会話が出来て楽しかったのだ。
「へぇ、この色も似合うな。」
「そ、かな?陰気臭くない?俺、根暗だから。」
ターコイズブルーのシャツを貴志の体に当てると、予想外の反応に笑ってしまった。
「ブフッ!貴志って、根暗なの?」
「そう、暗いんだ。」
困ったように眉を寄せて笑っている。
何となく寂しい過去があったような気がして、それ以上は突っ込まなかった。
そういえば出会いからして、ため息から始まった。
・・・まさか、あの公園のベンチからこんなところに来るなんてね。
「この色とか、トオルさんに似合いそう。」
「本当?」
貴志から差し出されたシャツは、淡いピンクだった。
まず自分では選ばないカラーに、一瞬尻込みしたが、貴志がせっかく選んだシャツだから、体に当ててみることにした。
「あ、やっぱり。」
「意外と。」
良いかも。
でも、
「これだけだと雰囲気がボンヤリするから、これ買おうかな。」
革紐のチョーカーを手に取った。
細い革紐を重ねたチョーカーには、甘すぎないシルバーの羽が何個か付いていた。
貴志の目が煌めいた。
「似合う!似合います!」
「ありがとう。」
可愛い反応に、何か買ってあげたくなった。
「貴志って、ピアス開けてないのな。」
「うん。仕事的にダメだし、穴開けるの、怖くて。」
おずおずと見上げられた。
「俺のはフェイクだよ。俺も開けてない。」
耳朶を挟むようにして装着するイヤリングだから、痛まない。
「にせもの?」
「そう。後で一緒に見に行こう。」
「うん。」
会計を済ませると、腹が減ったという話になった。
「何食いたい?」
「えっと、俺はいつでも食べれるから、トオルさんが決めて良いよ。」
あ、どうしよう。
キュンとした。
トオルは頭を振った。
気のせいだ。
自己主張しかしない連中と一緒にいるから、勘違いしただけだ。
「じゃあ、ソバと天ぷらかな。」
「えっと、なら、こっちかな。」
貴志に連れられて歩きながら、トオルは高鳴った胸を、無意識のうちに押さえた。
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