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肩を抱かれている。
あまりの接近に、貴志はあわあわと唇を震わせた。
あ、海外勤務が長いから?
だから、スキンシップ多いとか?
真夏なのに、肩を抱かれて。
熱くて熱くて、背中を汗が伝っていくけれど。
ごくんと唾を飲み込んだ。
「貴志、足が手と同じ動きしてる。」
「え、ええ?」
歩き方を忘れた。
ポンコツのロボットみたいに、ギクシャク動く。
「ほら、右。左。」
「あ、あれ?」
左足を前に出そうとしたら、右足のカカトにぶつけた。
「おっと。」
バランスを崩した俺を支えてくれたトオルさんは、明るく笑った。
「アハハ!貴志、やっぱり可愛い。」
ドジなところを笑ってくれて救われた。
「ほら、正門のあたりだとカフェが多いから、もう少し頑張って。」
「う、うん。」
大学の中は、木陰が多い。
同時にセミも元気いっぱいだ。
「貴志はセミとか捕まえてた?」
「ううん。でもね、ダンゴムシをポケットいっぱい詰めて帰ったら、母さんからめちゃくちゃ怒られたことはある。」
ブハッ!
洗濯しようとしたら、ダンゴムシだらけのズボンが出てきたら、そりゃ引くわな。
「そのダンゴムシはどうしたの?」
「えっと、確か公園にぶち撒けたかな。」
意外にヤンチャだったんだ。
「他には?」
「ん〜・・・、よくカブトムシとか蝶の標本があるでしょ。」
「うんうん。」
「あれが苦手でね、未だに直視できないかも。」
夏休みに田舎に帰省する男の子の自由研究と言ったら、標本が多かった。
俺は帰省するところがないから、作ったことはないけれど。
「苦手って何で?」
「わざと殺すでしょ。気持ち悪くって。」
ん?
「違うんじゃない?死んだ個体を標本にするんだよ。」
「え、そうなの?」
まあ、いずれにしても今にして思えば気持ちの良いものではないかもしれない。
「そう。他に夏休みって何してた?」
「ん〜。」
妹が居るらしい。
「6歳離れているから、喧嘩にもならないんだけど、妹と一緒にいることが多かったかも。」
「へぇ。同級生とかと遊ばなかった?」
遊んだけど、乱暴なところはちょっと苦手だった。
それに、恋愛対象が男の子だって気付いてからは、余計に距離感が分からなくなった。
「妹と遊ぶほうが楽しかったかな。トオルさんは?」
「俺は、バカなことやって遊んでたかな。」
適当な人とセックスして、ストレス発散もしていた。
「ほら、この店ミルクレープがオススメだって。」
「・・・美味しそう。」
純粋そうな貴志も、もしかすると他のヤツのものかもしれない。
「入る?」
「うん。」
肩から手を離した。
距離が離れると、途端に不安になるのは何故だろう。
窓際の席に座りながら、トオルは内心ため息をついた。
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