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ところ変われば、風習も違う。
改めて、実感した。
お供えするお花が、どこのお墓でも鮮やかだった。
白を基調とした花は、どこにもない。
黄色やピンク、青々とあざかやな緑を添えて、可愛らしい赤の団子花が印象的な花束が、あちらこちらで飾られていた。
そして。
「!!」
あちこちで爆竹の音が炸裂していた。
きな臭い火薬の匂いが漂う墓地は、異空間に飛んでしまったような気がしてならない。
銃撃戦のようなけたたましい音が鼓膜を揺らす非日常は、風見を内心困惑させた。
こういうお盆を送ってたんだ、小夜は。
改めて、絆が深まった気がした。
「風見さん、火をつけてみるね。」
「は、はい。」
手渡された爆竹を手に首を傾げた。
「どこで鳴らすんですか?」
実家の墓と比べると、長崎のお墓は広い。
きちんと塀を建てて、囲いがしてあった。
地面もコンクリートで固めてある。
「ここの中じゃろ。」
「え、足元ですか?」
大人3人が立つ敷地は、とても広いとは言えない。
「おれ、外に出るから、端でやって。」
小夜が避難した。
ええ?!
「ろうそくは、立っとるじゃろ。」
お墓に立てられたろうそくを指差されて、俺はごくんと唾を飲んだ。
風見は爆竹の導火線に火をつけて、さっきまで小夜が立っていた場所に放り投げた。
けたたましい音を立てて、爆竹が弾けていく。
間近に聞こえた破裂音に、さすがの風見も及び腰になった。
「アハハ、これで長崎ん人になれたばい。」
(これで長崎の人に成れましたよ。)
お爺さんが機嫌良く笑った。
「な、なれましたか?」
「なったなった。立派な婿じゃ。」
爆竹は魔除けの意味があるらしい。
お盆でかえってくる先祖の魂が、魔に取り込められないようにと爆竹を鳴らすのだそうだ。
風見は面白いと思った。
そして、全然違う場所で育ってきた小夜のことが、ますます好きになった。
きっとこれから先も、びっくりするようなことがあるはずなのだ。
その度に驚いて、その度に家族になったことを実感できる。
「お爺さん、小夜とはまだ籍を入れていません。ですが、先にパートナーシップ宣誓をしようと思っています。」
そう言うと、お爺さんはキョトンとした顔をした。
「まだ入れとらんとね。婚約期間の長すぎたら、捨てられるばい。」
「じ、じぃちゃん!!」
吹き出した。
あぁ、全く敵わない。
さすが、小夜のお爺さんだ。
「アハハ!捨てられないように、頑張ります。」
「うん、励め。」
可愛らしいお爺さんの前にしゃがんだ。
「さ、帰りましょう。風があるとは言え、熱射病になりそうです。」
「すまんね、風見さん。」
軽くなったお爺さんを背中に乗せた。
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