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実は陸都、一階の自動販売機横の喫煙所でタバコを吸っていた。
時計を見ると、そろそろ来客の時間で、もう上がらないとなぁと呑気に最後の一口をスゥッと吸い込んだ。
火を消してから飲んでいたコーヒーの缶をゴミ箱に入れて喫煙所の扉を開けると、
「馬の耳に念仏、馬の耳に念仏、馬の耳に念仏!!」
ギョッとした。
若い大学卒業したての男性が、呪いの呪文を唱えていたからだ。
・・・な、んで、馬の耳?
「よし!頑張るぞ!!」
気合いを入れまくってエレベーターに消えた彼が降りたのは、我が社のフロアだった。
へぇ。面白いヤツ。
揶揄ってやろう。
久しぶりに面白いヤツに会ったなぁと思いながら、陸都はエレベーターのボタンを押した。
------------※ ※ ※------------
鈴谷は新しいスマホの待受に愛する智樹さんとのツーショットを設定している。ロック画面は、可愛いカウパボだ。
エレベーターの中で智樹さんとカウパボにニッコリと笑いかけてから、開く扉から颯爽と(風見の真似をしているつもりだ)降り立った。
背筋を伸ばして、スーツの裾も引っ張って、ぶるんと頭も振った。
よし!
インターフォンを押した。
『・・・はい。』
「らららライムビジネスソリューションの、すすす鈴谷とお申します。らぃひょうとりしまりゃく様はいらっしゃいますれしょうか!」
ブフッ!
いつの間か背後に人がいた。
その人は、口を押さえながら会釈してくれた。
『お約束の鈴谷様ですね、お待ちくださいませ。』
「ありがとございますっ!」
ピシッと敬礼すると、背後の人の喉が鳴った。
「フグッ・・・!」
「ごめんなさい!邪魔してござりました!」
ブハッ!
陸都は堪らずに吹き出した。
「どうぞ、お入りく・・・あら、社長。」
インターフォンに出た社員が扉を開けて笑った。
鈴谷くんは目を白黒させながら、俺と社員の顔を見た。
しゃ、
「しゃちょうひゃま!!」
ブハッ!!
これが計算でやっていることなら、久しぶりに騙されてもいいかもしれない。
そう思いながら、陸都は鈴谷に優しく微笑んだ。
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