アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
165
-
久しぶりに行った古巣は、優しい空気に包まれていた。
「お久しぶりです。」
マネージャーを集めた会議は、最近、Web上でしか参加出来ていなかった。
出張も多い上、ビジソルにいる時でさえ、全国の有志たちのサポートや本体の技術との調整などで身動きが取れず、ずっと失礼させてもらっていた。
「あぁ、風見さん。お元気そうで良かった。」
馬野さんのいる営業2課に入れてもらい、お互いの近況を確認した。
「鈴谷さんは、お元気ですか?」
「ええ。」
馬野さんが鈴谷のことを振ってくれて、今日の目的のひとつを説明した。
「ああ・・・なるほど。」
馬野さんは、風見の話を穏やかに頷きながら、最後まで聞いてくれた。
「営業するための部隊ですからね。」
「ええ、彼も頑張ってはいますが、果たして鈴谷の素質に合っているのかが分からないんです。」
お互い、悩みは尽きない。
どうやったら、教えるんじゃなく、本人が気付くようにしていけれるか。
全国でひとりしかいない営業マンとしての新人。
彼をどうやったら一人前に育てることが出来るか、風見は最近、そればかり悩んでいた。
風見は、澤田を育てることが出来なかった。
彼女自身も、風見の気を惹こうとばかり考えていたから、余計に一人前には育たなかった。
マネージャー代理になり、改めて『育てる』という事を考えた3月から、季節は移り変わった。
ビジソルに転籍し、肩書きばかり偉くなったが、『育てる』ことに関しては、初心者のままだ。
力の無い自分を、悩ましく思っている。
鈴谷に教えるより、自分がやった方が商談を纏めることが出来るのだ。
「・・・でも、そういう訳にはいきませんからね。」
馬野さんも苦労しているようだった。
「飲みに、いきませんか?」
「あぁ、行きたいです。ゆっくりお話させていただきたい。」
そう返すと、馬野さんは嬉しそうに笑った。
「親戚の子が店長している店があるんです。軽食にはなりますが、融通がききますので、良ければそちらに。」
「ぜひ。いつになさいますか?」
「では、金曜日はいかがでしょう?」
頷いた。
「この店です。」
馬野さんの携帯の画面を見て驚いた。
「あぁ、知っています!」
そう、ダーツバーもぐらが画面に表示されていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
165 / 343