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「だから、おれは元気なんだってばっ!」
病院の近くのファミレスで、緊急会議が行われた。
「うんうん。」
もー!信じてくれてない!!
奥の席から、小夜、風見、奏太、拓篤。
小夜の前に貴志、晋作、智樹、鈴谷が座った。
お腹も空いていたので、昼食を兼ねた会議になった。
「だいたい、何で暁さんは病院に来たの?」
奏太と拓篤がハッとした。
「そういえば、死にものぐるいで走ってた。」
「だな。それ見て松岡くんも追ったんだもんな?」
智樹は、上品にクルクルとパスタを巻きながら首を傾げた。
「あら、本当だわ。ワタシたちはお見舞いだったけど。」
心当たりのある貴志は、額の汗を拭った。
「・・・通報がありまして。」
うどん定食のせいなのか、通報の犯人だからなのか、尋常じゃない汗が吹き出てくる。
「通報?風見さんは、警察の人でもあったんですね!」
間抜けな鈴谷のコメントに、智樹はそっと彼の口を塞いだ。
「シッ。すず、バカがバレるから黙ってなさい。」
「むがっ!」
チラリと貴志を一瞥した風見は、小夜の左手を握った。
「小夜が浮気しているって、タレコミがあったんだ。」
「え?何それ。」
「絶対に小夜は浮気なんてしない自信はあったんだけど、逆に脅されて監禁されているんじゃないかって思って。」
「監禁?!」
物騒な話に、小夜は目を丸くした。
「だれに?!」
「とまち、ゆうき。」
ええ?!
「盲腸で入院してるのに、まず無理よ。それに、悠はタカのことしか見てないわ。」
「・・・。」
風見さんが難しい顔で黙り込んだ。
「暁さんも見たでしょう?はなれで貴志さんに告白してた姿。」
小夜がそう言うと、風見は眉間に皺を寄せた。
「・・・彼が、とまち、ゆうき?」
「和風ハンバーグをお持ちしました。熱いのでお気をつけ下さい。」
じゅうじゅうと音を立てる鉄板を持って、スタッフの女性が現れた。
手が震えているのは、新人さんだからなのかも。
「ありがとうございます。こっちです。」
風見さんと繋いだ手を離して手を挙げると、スタッフの女性は残念そうな顔をした。
・・・あぁ、風見さんのハンバーグだって思ってたのかな?
「でも、なら、あの、もぐらの店長は?」
「もぐらの店長なのは知らないけど、リツさんよ。風見さんが気になってるのは、金髪の人でしょう?」
晋作は目を丸くした。
・・・もぐらの店長?
わぁぁぁ、もぐらのお店があるの?!
ネコに、ハリネズミ、フクロウ、ウサギなんかのカフェがあるのは知っている。
最近は、もぐらのカフェがあるんだ!
ワクワクした。
「そうです。・・・道理で。」
「お待たせしました、焼肉定食ライス大盛りです。」
芳ばしい香りが立ちのぼる。
鈴谷が手を挙げた。
「はい!」
「なに、すず。」
塞いでいた手を退けると、智樹は鈴谷の言葉に耳を傾けた。
「男同士でディープキスしてたってことは、悠さんとリツさんは恋人ってこと?」
スタッフの人がお盆を落としそうになった。
「うーん、ね、タカ。恋人って雰囲気じゃなかったわよね?」
「うん、自信ないけど。この前、しんちゃんがナンパされてたくらいだもん。」
風見は貴志から晋作に視線を移した。
「晋作くん、本当かい?」
「うーん、たぶん。リツさんから偶然、公園で声を掛けられたの。」
へぇ。
奏太は黙って唐揚げ定食を食べながら、観察を続けていた。
「お待たせしました、日替わりランチです。」
「ふぅん。で、どうして小夜がアレってことになったんだ?」
晋作くんと風見さんの前にプレートが届いた。
エビフライとアジフライ、キャベツの千切りとナポリタンが乗っている。
「日替わりのライスです。大盛りの方は?」
「おれです。」
晋作くんが手を挙げた。
「だって先生が、おれに痔になったって言ったもん。」
とうとうライスがテーブルの上でひっくり返った。
「す、すみません!すぐ作り直します!」
「慌てずにどうぞ。」
風見さんが優しく微笑んだ。
「晋作くん、おれはそんな事、ひとっことも言ってないから。」
「え?!だって、あんなおっきいのが入るんだよ?」
スタッフの女性は、テーブルの上に落ちた米を握りつぶした。(食べ物を粗末にするのはやめましょう。)
「も、もう!!おくちはチャック!!」
「ふがっ!」
天国のような、幸せなテーブル。
スタッフは、心の中でガッツポーズをした。
つまり、この風見さんのソレをこの子もあの子も入れたことがあると!
つまり、そう言うわけですな!!
「え、待って。松岡くんが痔なんだよね?」
「え、なんで?」
拓篤は、しくしく痛みで泣く晋作を、一階のベンチで慰めたのだ。
「・・・だって痛いって泣いてたよね?」
ああ、テーブルを離れたくない!!
スタッフは身を切る思いでひっくり返した残骸を手に裏に戻った。
そして、超特急で新しいお皿にご飯を乗せた。
「先生が痛いだろうなって。」
「「ええ?!」」
ふたりを調教する風見様(スタッフの目にはそう写った)に気持ち多めによそったライスをそっと置いた。
「じゃ、じゃあ松岡くんが痛いわけじゃなかったんだ?」
なるほど、松岡くんのお尻は強い方ね。
ああ、この光景がカメラに撮れればいいのに!
早足で裏に戻って、カツとじ定食を手に取った。
どうしよう!オーダーが揃ってしまった。
解決策が見つからない。
悔しさに唇を噛みしめながら、カツとじ定食を運んだ。
「大変お待たせしました。カツとじ定食です。」
「なんだ。心配して損した気分。」
「拓篤。一応、応援できたからいいんじゃないのか?」
オーダー票をアクリルの伝票入れに差し込んで、以上宣言するつもりで開いた口を、さっと閉じた。
「で、風見さん。その通報って解決したの?」
あぁ、知りたい!
監禁・・・、めくるめく快楽の縛り・・・っ!
渾身の念を込めて、気配を消した。
「したと思っていますよ。だいたい、ゆうきが彼なら監禁なんて出来ませんからね。」
ずっと大人しく麺を啜っていた貴志は、爆弾を落とした。
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