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その歪みは恋かもしれない
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朝小林と話ている間チラチラと翔吾の方を見ても、アイツが俺の方を見てくることは1度も無かった。それから悶々として午前中の授業を終えてあっという間に昼休みになった。普段は真剣に授業を聞いている俺だったが、翔吾のことがきになって、悶々としてしまい、授業に身が入らなかった。昼休みはいつも翔吾と2人で食べていたが、探しても翔吾が見当たらず、俺はその日、小林と2人で食堂に向かった。注文してやってきたうどんを前にして俺はため息をついた。向かい合って座る小林は大盛りのカレーを頬張りながらそんな俺の様子を伺う。
「悠、どうしたの、松川(翔吾)と喧嘩でもした?」
俺はうどんをすすりながら答える。
「やっぱ、そう見える?」
「うん、いつもなら授業の合間のちっちゃい休みにもしつこいくらいに悠のところ来るじゃんアイツ。でも今日来ねぇし昼休みも俺とだから」
「ん〜…喧嘩した訳じゃ、ないと思うんだけど…」
俺は箸を置いてどんぶりの中のうどんを見つめる。
「なんだろう、なんか、変わっちまったんだよな、きっと」
俺の言葉を理解出来ずに小林は首を傾げた。俺はなんとなく食欲が湧かなかった。
「わり、俺ちょっとトイレ行ってくる」
「おー」
小林に見送られ、俺は席を立ってトイレに向かった。俺が何をしたっていうんだ。むしろ何かしてきたのはお前じゃないか。普通に話しかけようと努力しなきゃいけないのはお前だろ。それなのになんで俺がこんなに悩まなきゃいけないんだ。段々、モヤモヤが怒りに変わってきてる中、トイレに入った。今まで下を見ながら歩いていたのをパッと顔を上げると、そこには翔吾がいた。しっかりと目が合った。
「あ…」
苦虫を噛んだような顔をして、出会っちまった、みたいな顔をして、翔吾は声を発した。なんなんだよ。なんでお前がそんな態度取るんだよ。気づいたらそれが口から言葉になって出てしまっていた。
「なんでお前が、そんな態度取るんだよ」
俺が顔を歪めてそう言うと翔吾は戸惑った顔をした。
「…え?」
「お前なんで普通に話しかけてこないんだよ。朝だって迎えに来ねぇし、学校じゃ目も合わせない。一緒にいていい?って聞いてきたのお前じゃねぇか。なんでお前が避けるんだよ」
「悠ちゃん…」
全て言い切った俺の頬をつぅと伝う何かがあった。手で拭ってみるとそれは目から流れていて、それが涙だと理解するのに少し時間がかかった。
「あれ…俺、なんで泣いて…」
俺の様子を翔吾はただ黙って見ていた。あいにく、トイレには誰もいなくて、泣いているのは翔吾にしか見られていなかった。翔吾は突然何も言わずにつかつかと俺の方に歩み寄り、俺の手首をグッと掴んで、1番奥のトイレの個室に翔吾と一緒に俺を入れて、鍵をカチャリとかけてしまった。
「おいっ!翔吾、何してんだよ。おい!」
そう言って翔吾の顔を覗き込むと、翔吾はいたずらに笑っていた。
「悠ちゃんやっぱり最高だよ。悠ちゃんから来てくれると思ってた」
そう言って俺のことを狭い個室の中でギュッと抱きしめた。俺は呆然として抱きしめられたままでいた。
「悠ちゃん、今から楽しいことしよう」
翔吾がいたずらな笑みを浮べてポケットをごそごそし出した。俺は嫌な予感がして顔を青ざめていた。
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