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その歪みは恋らしい
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風呂から上がると、着替えが用意されてないことに気がついた。
いつもなら翔吾が棚の上に下着から部屋着まで全て用意してくれているはずだった。
全て服を洗濯機に入れてしまったので、仕方なく俺はタオルを下半身に巻いて脱衣場を出てリビングに行った。リビングのテレビは付けっぱなしだが人のいる音がしない。ソファから静かな呼吸音が聞こえてきたので、ソファを覗き込んで見たら翔吾が横になって寝ていた。テレビを見ながら眠くなってしまったのだろう。とりあえずどの服を着ていいのか分からないため、翔吾を起こす。髪や身体は濡れていて、少し寒かった。
「おい、翔吾、起きろ」
俺が優しく2、3回頬っぺを叩くと、翔吾は目をゆっくりと開けた。寝ぼけたまま俺の格好を見る。すると目を見開いて飛び上がった。
「!?悠ちゃんッ!?」
俺は大袈裟に驚く翔吾にムスッとした表情で言う。
「そんなに驚かなくてもいいだろ。それより、部屋着と下着用意されてないんだけど」
俺の髪から水が滴る。翔吾はあからさまに俺から目を逸らし、動揺している様子だった。
「そ、そっか!ごめん、待って!今持ってくる」
「…。」
翔吾はバタバタと階段をかけ登って行ってしまった。そして直ぐに部屋着と下着を持って戻ってきた。
「はあ、ごめん悠ちゃん。これ、はい」
翔吾の顔は赤く染まり、俺と目を合わせることが無かった。俺は翔吾のそんな態度が気に入らず、思わず翔吾の手を掴んだ。翔吾は驚いて、持っていた部屋着類を床に落とす。
「あっ…悠ちゃん、その、何?」
「…。」
俺はじっと翔吾を見つめる。しかし翔吾は目を合わせようとしない。
「ごめん、悠ちゃん、手放して?俺ダメだ、意識しちゃって」
いつもの平静で、余裕ある笑顔を浮かべる翔吾からは予想もつかない対応だった。
「翔吾、俺、男だぞ。よく見ろ」
俺が真剣なトーンで言うと、翔吾はゆっくりと顔を上げて俺と目を合わせた。
「なぁ翔吾。俺は男だ。お前は今俺のことを好きだと言うけれど、きっといつかそれを後悔する日が来る」
俺は自分のその言葉で、自分の胸がチクッと痛んだ気がした。
「分かってるよ。けど、悠ちゃんじゃなきゃ、俺駄目なんだ」
翔吾は顔を赤く染めながらも、俺を真っ直ぐ見つめてきた。その目はとても真剣で、澄んでいて。
俺は翔吾の手を離した。そして部屋着類をとってリビングで着替え始めた。翔吾はそれを見ている。
「翔吾、俺、いいぞ。」
「へ?」
翔吾は俺が何を言っているか分からない、という様子だった。
「俺、1ヶ月いっぱい考えたよお前のこと。お前は言った通りちゃんとなんだ…その、誠実に俺に向き合ってくれてるって感じた。今の目を見て、確信した。けど俺は…お前の傍に居たいとは思うけれど、これが恋だと言える確信がねぇ。」
翔吾の喉がゴクリと動く。じっと、彼が俺の言葉を待っている。
「だけど、お前と向き合いたい。それでいいなら、お前と付き合ってやってもいい」
そう言って、俺の胸が熱くなっていくのを感じた。翔吾は俺の言葉を聞いてすぐ、俺の身体をギュッと抱きしめた。まだ下の部屋着しか着ておらず、まだ上は濡れていて髪からも水が滴る。
翔吾の顔は見えなかった。それぐらい強く抱きしめられて、俺は翔吾の胸に顔を埋めた。翔吾の体温や匂いが、優しくて、心地よかった。
俺は幸福感に満ちていた。
翔吾は一言小さく、ありがとう、と呟いていた。
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