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ダブルデート【4】
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……兎田ひなた、14歳。
まだ中学生だったひなたは、父が理事を務め、自分も将来通うことになる今の高校に父親と見学に来ていた。
理事が子供を連れて見学にいらっしゃるとの連絡は全国生徒に回っていたが…まさかの美少女の登場は男子高校の生徒たちにはそれだけで十分衝撃的だった。
「じゃあ、パパはちょっと学園長さんと今後の出資の件で話をしてくるからね。」
「んー、じゃあぼくはその辺回ってみてくるよ。終わり次第、車で待ち合わせよ。」
「そうだな」
学園長室の前で父親に手を振り、ポケットから携帯を取り出して時間を確認する。
(出資…どうせぼくが入学したとき出資学増やすってあれでしょ…30分くらいか。)
終了時刻を見積もると、そのまま学園内マップのアプリを起動させる。
現在地と今まで回ったところを照らし合わせ、行きたい場所を絞ると…
「音楽室…」
柔道に極真空手、剣道といった武道や花道、茶道…バイオリン、水泳…様々な習い事をこなしてきたひなただが、ピアノに関しては自ら進んでレッスンするほど幼い頃から好んでいた。
そしてこの学校の音楽室のピアノは一台で数千万円と言う上物であり、定期的にしっかりと調律もされている。
情報を確認したひなたは、早速1年生の教室棟の奥にある音楽室へと歩みを進めたのであった。
さすがに金持ちの高校とあって、なかなか広い。
途中何度かあったナンパまがいの行為も跳ね除け、やってきた音楽室。
ひなたは少しワクワクしながらそのドアをノックした。
「失礼しま~す…」
特に誰かいる様子も無かったが、こっそりとドアを開ける。
きょろきょろと辺りを見渡し、教室内に入ると…
目の前に、グランドピアノ。
「…わぁ…」
窓から注ぐ夕焼けの光で、キラキラとしかるグランドピアノに吸い寄せられるように近づいていく。
ひなたの家にもグランドピアノはあるが…やはり、年季が違うためかとても魅力的に見えた。
備えられた椅子に座り、鍵盤の蓋をそっと上げる。
美しく並んだ鍵盤は綺麗に磨かれていて…そ、と指を添えるとその滑らかな質感に胸が高鳴る。
「……ちょっとだけ…」
弾いてみても、大丈夫だよね…うん。扉は閉まっているし、防音は完璧なはずで…
そう自問自答して、ひなたは両手を鍵盤に添えた。
中学に入ってはじめての発表会で演奏した、お気に入りの曲。
本来なら中学生には到底弾けないような曲だといわれたが…気に入ってしまったし、なにより弾きこなすことができた。
目を閉じて、夢中になって演奏する。
そして楽しい時間はあっという間に終わりを告げて、ひなたはそっと目を開く。
…すると、どこからかパチパチと拍手が聞こえてくる。
ひなたはぎょっとして立ち上がり、教室を再び見渡す。
…と、並んだ机のひとつに、こう学校の制服を着た男子生徒の姿があった。
「え…ちょ、いつの間に…」
「んー、俺はずっとここにいて昼寝してたよ?君があとから入ってきてピアノ弾き始めたの。」
「うそ…!?」
「ほんと。」
嘘ついてどーすんの、とその人は少し笑う。
そしてゆっくりとひなたのほうへ歩み寄ってきた。
「君、どうしたの?迷子?」
「いや…父親がここの理事で、一緒に見学して回ってて…」
「見学?…あぁ、来年からここ通うの?」
「へ…っ?」
その言葉に、ひなたは固まる。
逆光でよく見えなかった顔が、明確になってくる。
「ここ、男子校で…っ」
「え、うんそうだね。君だって、男の子なんだから通えるでしょ?」
今の今まで『美少女』と騒がれていたひなたを、一瞬で見破った。
そして…
「ふふ、変な子だね。」
そう言って笑いながらひなたの頭を指先で優しく撫でる。
その人こそが……
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