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シアワセ【4】
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「ひなたさま!!……って、あら、夕陽さまじゃありませんか。」
「愛衣…もう兄さんのこと追いかけるのやめたげなよ。」
夕陽が窓際から離れたところで愛衣はひなたのクラスにやってきた。後から焦った様子の付き人が息を切らせておいかけてくる。
愛衣は夕陽の姿を見るとやっと足を止めた。
「いいえ!あの方が女装をやめてあたくしに兎田家伝承の婚約ブレスレットをくださるまであきらめませんわ!」
「…一生かかっても無理だと思うけど…」
「それでも、諦めませんわ!」
ぐ、と拳を握り、夕陽を見上げにらみつける愛衣。
…幼馴染みは、いつからこんなに泣きそうな顔でひなたを追いかけていた?
夕陽は愛衣に手を伸ばしかけ…ぐっと、その手を引いた。
「ひーなたー……って、あれ?夕陽くん。…と、愛衣ちゃん?何でここに?」
「…!!周さん!」
「…滝沢周……っ!」
なんてタイミング、と夕陽は焦る。
その心配通り、愛衣は周を睨みつけている。…が、一方で周はあまりいつもと変わらない様子だ。
「相変わらず嫌われてるねぇ、俺。」
「当然ですわ!貴方は邪魔なだけですもの!」
「そ。んー、ここに愛衣ちゃんがいるってことは、ひなたはいないか。」
逃げたんでしょ?と笑いながら夕陽の顔を覗き込む。
夕陽は「えぇ、と」と、曖昧な返事をしながら愛衣にちらりと視線を送った。
「…そんな、ひなたさまがあたくしから逃げていることくらい、気付いてますわよ。」
「……デスヨネ。」
「それでもあたくしは…朴木家のため…」
「それだよねー、それ。」
俯きながら泣きそうな声で話す愛衣に、周が口を開く。
愛衣、そして夕陽が顔を上げ、周を見た。
「家のためって、それ。俺には家がないし良く分からないけど、それってつまり君自身はひなたのこと好きなわけじゃないでしょ?」
「…、それは…っ」
「そんな婚約とか結婚の仕方じゃ、ひなたもきみ自身も幸せになれないと思うんだけどなぁ。」
まぁあくまで貧乏人の意見ですが、と周は笑う。
「俺とひなたは男同士だよ。そのことに関しては確かに世間から見ればイレギュラーだと思う。…でも…」
「ぼくは先輩が大好きだし、先輩もぼくのこと大好きだもんねっ」
「ひな…!」
「ひなたさま!」
どこからともなくひなたが現れ、周の腕に抱きついた。
さすがにそのことには周も驚いたらしく、「びっくりした」と小さく呟いた。
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