アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
シアワセ【5】
-
「空き教室からここ見てたら、先輩が見えたのですっ飛んで来ました。」
「…ハイパー視力っすよ、マジ…」
俺には見えなかったです、と筧がドアに寄りかかって苦笑している。
まだ周が教室に現れて時間は経っていないはずなのに、すでにひなたに追いついて教室にいる筧もハイパー運動神経だよ、と夕陽は心で突っ込みを入れた。
「愛衣。」
「…ひなた、さま…」
…先程までのひなたの様子とは打って変わり、ひなたはその眼光を鋭く愛衣に向けた。
ひなたの身の回りの人たちは、その様子を嫡男モードと呼んでいる。
「僕と結ばれたいって言うのは、君の意思じゃない。」
「…っ」
「確かに僕たちは嫡子。生まれ持った責任を誰に押し付けることもできない。自ら、どうにかしなくてはいけない。…でも…」
ひなた…『陽太』の右手が、優しく愛衣の頬に触れた。
愛衣は顔を上げる。
「君の幸せを犠牲にする必要はないんだよ、愛衣。僕は…ぼくは、幼馴染みの愛衣の幸せを願ってるんだから!」
ね?と笑うのはひなた。
そしてクルっと方向転換すると、今度は夕陽を見る。
「ゆう…ううん、夕陽。」
再び灯る、嫡男『陽太』の眼光。
この目で見られるのは久しぶりだなぁ、と夕陽は心のどこかで思う。
…口にはできない、緊張感。
「夕陽に…僕から、あのブレスレットを託すよ。」
「…は……はぁ!?ちょっと、それって…」
嫡男の嫁に代々受け継がれてきた、兎田家伝承のブレスレット。
結婚できる歳、つまり相手が16歳、もしくは自分が18歳になったときに受け継がれるもので…陽太も愛衣が16歳になったときに受け継いだ。
…が、陽太自身には愛衣と婚約する気はサラサラ無く今まで渡さずにいたのだ。
「元々双子だし、特に問題はないはずだ。…ただ、僕の出来が良かったから継承されただけで。」
「でも…」
「もちろん今後の経営とかは僕に任せてもらうよ。…でも、兎田家を継承するのは夕陽の方が向いている。」
「え…?」
意外そうに陽太を見る夕陽。
言い張る陽太に頷くのは周だ。
「だって夕陽くんと愛衣ちゃん、どう見たって両思いだもんね。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 34