アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
オトコノコ【2】
-
「…また…伸びてた…」
身体測定票を見ながら、ひなたはため息をついた。
そのリアクションそのものは身長が伸び悩む男子高校生のそれだが、ひなたの場合は真逆。昨年よりも5センチばかり伸びた身長にため息をついているのだ。
「と、言っても平均以下だろ。」
「まぁそうなんだけどさ…167センチの女の子はそれなりに大きいほうでしょ…」
「いや、お前男だからな。」
「だから嫌なんだよー…」
ひなたが恐れているのは…女装が似合わなくなるのではないか、と言うことだ。
母親の趣味から始まり、物心がつく前から女装はしていたひなた。幼稚園、小学校に中学校、そして高校にいたる今日まで女装が彼にとっては『標準』だったのだ。
だが成長にはかなわない。
だんだんと伸びる身長や、骨ばっていく自分の体を鏡で見るたびに嫌になっていく。
そしてこうして数値化されたものを見ると、改めて自分の成長を感じてしまうらしい。
「…ちょっと筧くん?俺のひなたが泣きそうに見えるんだけど。何かした?」
「げ、滝沢先輩…」
「あまねせんぱいっ」
身体測定票を見てため息を吐くひなたの後ろから、ふわりと腕がまわされる。
もちろんひなたに抱きつくような行為をするのは…周だけである。
「ってか!別に俺が泣かせたわけじゃねぇッスよ!」
「そうなの?ひなた。」
「んー…先輩、ぼくまた身長伸びちゃって…」
5センチも、とちょんちょんと数値を指差してため息をつく日向。
周は「成長期だからねぇ」と微笑んだ。
「俺も伸びたよー、180センチだって。」
「わぁ…ますますかっこよくなっちゃいますね、先輩!」
「ふふ、ありがとう、ひなた。」
イチャつくならよそでやれ、と思いながらも一応先輩である周を前に、ため息で抑える筧。
そして周に撫でられて一時は嬉しそうにはにかんでいたひなただったが、しゅん、とまたうなだれる。
「…ぼく、女の子だったらよかったのになぁ…」
「ひなた?」
ぽつり、と呟かれた言葉。その言葉に、周と筧は驚いた。
見た目は稀に見ぬ美少女であっても、兎田家の嫡男としての務めだとかしきたりだとか…社交パーティーにも嫡男として本人曰く「男装」で赴いたりして『男』として頑張っていたひなた。
そのひなたが紡いだ言葉。
はっと我に返ったひなたはパッと周の手から離れた。
「ほ、ほら!女装できなくなっちゃうのはちょっといろいろ困るし!ね!」
誤魔化すように笑い、筧の下へ走る。
そして筧の背中を押しつつ、顔だけ周を見た。
「ぼくたちまだ体重量ってなくって!先輩、またあとで!」
「あ…う、ん。」
(…叶わないことを言ったって…)
先輩が困るだけなのに。
そう考え、今まで本音を漏らすことはなかったひなた。
自身からこぼれ出た言葉に驚いているのは、何よりひなた自身だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 34