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タラシとヘタレ【1】
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本屋と言うのは意外と万引きが多い。
そしてその人たちの種類もなかなか多様で会社帰りのサラリーマンから勉学にいそしむ高校生、老人までも監視の対象である。
そして今、バイト中の周に群がる女子高生もそうだ。
2人はレジにいる周にまとわりつき「お兄さんカッコイイね!」などと注意を引こうとする。
そしてもう2人が実行犯。ネイルアレンジの雑誌のコーナーで人が消えるのを待つ。
(…ちっとも可愛くない…)
さっきまで自分に媚を売っていた姿も、たった今4人まとめて捕まえて、「ごめんなさい」と泣きじゃくるその姿も。
ふざけた同僚が「右から二番目かわいくね?」とか言っていたが、周にはひとつも魅力的に感じない。
あくまで周の「かわいい」の対象はひなただけらしい。
悩むひなたの姿を見た後に不謹慎だと思いながら、そんな姿を見たからこそ、あらためて思う部分もある。
謝っているし、本も戻ってきたということで警察に突き出すことはせず、各々の保護者に連絡をして彼女たちを解放した。
それとほぼ同時に周は上がりの時間になった。
「お前、マジで女に興味ねぇの?」
同時にバイトを終えた先輩が、先ほどの周の態度を受け笑いながら聞いてきた。
周は面倒だと思いながら「そんなこともないですけど」と返す。
「あの子たちより、断然俺の恋人のほうが可愛いです。」
「は!?お前リア充かよ!ちょ、写真とかある?」
「無くもないですけど…」
この間撮ったプリクラの画像が携帯に入ってたはず。見せてみろよと急かす先輩に、周はため息をつきながら携帯を操作した。
ちなみに、最近のゲームセンターではプリクラコーナーはカップルじゃないと男性は入れないところが多いが…ひなたの容姿があるため、2人は簡単に入ることができる。
「はい、これです。」
「どれどれー……うぉ!超美少女!」
「はい終了。」
ぱ、と先輩の手から携帯を取り上げる。
そして「俺のですから」と笑うと、お先に、と言ってロッカールームを出て行った。
先輩から取り上げた携帯をそのままいじりながら周は帰路を歩く。
電波状況のよろしくないロッカールームから出るとすぐに、メールの送受信をかける。…案の定、何件かセンターでひっかかっていて。
ほとんどを占めるメールマガジンを削除しつつ、ひなたからのメールを探す。
そしてメールを見つけ出すと、ひとり思わず笑みをこぼしてしまう。
「…ほんと、かわいいなぁ…」
誰もいない閑静な道の途中で、周は呟く。
携帯の画面には可愛らしい絵文字で彩られたメールと、愛犬のポメラニアンと一緒に写真に納まるひなたの姿。
周は添付ファイルを保存して、ひなたへの返信を打ち込み始めた。
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