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問題だらけの勉強会 16
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篠原柊side
「はぁ…」
自然と深いため息が出る。
初めてだ。
初めてこんなに苦しいと思った。
初めて誰かに信じて欲しいと思った。
それはたぶん、先輩だから…
先輩だけには、信じて欲しかった。
言って欲しかった。「篠原は、そんなことする奴じゃない!!」って…。
でも…
「自業自得…か。数週間前までは不良だったんだし…。」
こんな数週間変わっただけで過去が書き変えられるわけじゃない。
誰もが認めてくれるわけでもない。
それに、先輩だって…
無理矢理抱こうとして、無理矢理付き合って…
乱暴なこともいっぱいしたし、俺の嫉妬でたくさん迷惑かけた。
こんなんじゃ信じてもらえるわけねーよな…
「おーい!!篠原!!!」
後ろのほうから声が聞こえる。
振り返ると、孝太先輩が俺のほうに駆け寄る。
ものすごく息が荒い。
相当走ったのだろう…
「どうしたんですか、孝太先輩。」
「夕貴…夕貴知らないか??」
「夕貴先輩…ですか??」
「あぁ。」
「知りませんけど…。どうかしたんですか??」
珍しく孝太先輩は焦っているようだ。
孝太先輩と言えば、すごく冷静で頼りがいがあって、仕事のときはクールだけど、友達に見せる一面は明るくて優しいけど、時々意地悪。それでも、やっぱり優しい。
そんな噂をよく耳にする。
でも、夕貴先輩を通して、孝太先輩と関わってきたけど、なんとなくみんなが言っているのはわかる気がする。
俺も、孝太先輩にはいろいろと助けてもらったから。先輩のことで。
そんな孝太先輩が焦っているってことは、ものすごくやばいことが起きたのだろう…
「おまえ、夕貴と会ってないのか??」
「会ってませんけど…。ホントどうしたんですか??」
「夕貴がいないんだ。」
「え…??」
耳を疑うような言葉。
夕貴先輩が…いない??
「どういうことですか??」
「おまえに会いに行ったっきり帰ってこないんだよ。携帯は、部屋のドアの前に落ちてて。何かあったんじゃないかって探してるんだけど…。」
「そんな…うそだろ。」
下唇を噛み締める。
俺のせいで先輩が危ない目に…
そんなの絶対に嫌だ…!!
「俺も、探します!!」
「助かるよ。でも、誰が夕貴を誘拐するんだろう…」
「先輩に思いを寄せてる子は多いですからね…。」
「あぁ…。」
なるべく、冷静に考える。
こんなとき、焦っちゃだめだ。
冷静に考えないと…
そう何度も自分に言い聞かせる。
そんなとき、「あっ…」と、孝太先輩から何かひらめいたような声が漏れる。
「何か分かったんですか??」
「もしかしたら…啓介先輩かもしれない。」
「啓介先輩??」
誰だ…??
知らないけど、どっかで聞いたことがあるような…
あっ!!啓介先輩って確か…文化祭のとき、夕貴先輩を連れて行った奴??
でも、なんであいつが…??
「啓介先輩、すごく夕貴のこと溺愛しててな…。あ、啓介先輩っていうのは、夕貴の前の生徒会長だよ。」
あぁ…だからあんなに親しかったのか。
「でも、その溺愛っぷりがハンパなくて…。夕貴のためならなんでもするって奴なんだ。」
「え??」
どういうことだ??
「おまえがまだこの学校にいなかったとき、いろいろとやばい事件が起こってたんだよ。タイヤのパンク事件とか、靴がなくなった事件、テスト紛失事件。」
「それと、先輩たちに何の関係があるんですか??」
「これらの事件は、おそらく啓介先輩が夕貴のためにした事件だ。」
「え??」
「夕貴を襲ったり、告白を断られて夕貴に逆恨みした先生や生徒たちばかりがこの事件の被害者になっている。」
「でも、なんでそれだけで啓介先輩がやったってわかるんですか??」
「言っただろ。啓介先輩は夕貴のためならなんでもする奴だ。」
「っ!!」
「俺も、1、2件なら偶然だと思った。でも、6、7件と続くとさすがに…な。ま、夕貴はドがつくほどの鈍感だからね。全然気づいてないけど。」
「なんで、夕貴先輩にそのこと言わなかったんですか??」
「あいつの傷つく顔なんて見たくないだろ。」
「っ…。」
孝太先輩の言うことはよくわかる。
俺だって先輩の傷つく顔なんて見たくない。
だから、俺も孝太先輩の立場だったら、おそらく言わないだろう…。
「でも、まさか夕貴のほうにまで被害が行くなんてな…。」
孝太先輩は視線を俺から地面に向けた。
今、孝太先輩は苦しんでいる。そして、夕貴先輩も…。
助けないと…
夕貴先輩と孝太先輩を…助けないと。
「俺、助けに行きます。」
「え??」
「夕貴先輩を助けに行きます!!」
「助けに行くって、あいつらの居場所わかんねーだろ。」
そうだけど、じっとしていられない。
今すぐ動かないと…今すぐ探しに行かないと…1秒でも早く、先輩を見つけないと…
もっともっと君を傷つけてしまう。
「でも、このまま何もしないよりはいい。それに、このまま時間が過ぎていくと、その分だけ夕貴先輩が傷つく。そして、孝太先輩も。」
「っ!!」
俺は孝太先輩に背中を向けて走り出す。
すると、後ろのほうでまた声が聞こえた。
「篠原!!!」
孝太先輩の声に、俺はまた振り返る。
「体育倉庫に行け!!」
「体育倉庫??」
「文化祭の後夜祭のとき、体育倉庫で夕貴と啓介先輩が話してるの見かけたから!!」
「わかりました!!」
俺は、孝太先輩の言葉を頭の中で何度も繰り返し、再び走り出した。
待っててください、先輩。
今、助けにいきますから…
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