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好き、嫌い、好き 09
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「あ、先輩。遅いですよ。」
「ごめんごめん。」
プールに着くと、篠原はもう掃除を始めていた。
「はい、これ先輩の。」
そう言って、ブラシを渡され、俺も掃除に取り掛かった。
お互い何も話さず。
黙々と作業を進めていく。
話したくないわけじゃない。
ただ、何を話せばいいのかわからない。
俺、篠原と何話してたっけ…
考えれば考えるほどわからなくなってきた。
てか、そんなこと考える前にまずはプール掃除を早く終わらせないと!!
「先輩。」
そんなとき、急に話しかけられて、心臓がビクンと跳ねる。
驚きと、うれしさが混ざって。
「な、何??」
「今さらですけど、体大丈夫ですか??」
「え??」
「ほら、昨日抱いたから…」
「っ!!」
「腰とか痛かったんじゃないかなって。」
いや、いてーよ。
すっげーいてーよ。
でも、そんなこと言われると、腰よりも心臓のほうが…
「先輩??」
「え、あ、えっと…だ、大丈夫。」
動揺で、自分でも何を言ってるのかわからなくなる。
「ね、先輩。もしかして、俺のこと意識してる??」
「は、はぁ??な、何言って、」
どんどん篠原が近づいてくる。
「だって、すっごい動揺してるから。」
かっこいい顔で。長い足で。
「べ、別に動揺なんか…」
真剣な瞳で俺を捕らえながら、一歩一歩。
「じゃあ…先輩はさ、実際俺のことどう思ってんの??」
逃げられない。
「ど、どうって…」
体が動かない。
「嫌い??それとも…好き??」
体が熱い。
「えっと、それは…」
とうとう俺の前まで来た篠原。
恥ずかしい気持ちがぐるぐるして、顔が見れなくて俯く。
でも、顎を掴まれ、グイッと俯いていた顔が上がる。
近い。篠原の顔が目の前に。
あと何cm…いや、何mでキスできるだろうか…
「答えて、先輩。」
「それは…」
息が当たる。
それすら心地いい。
なんなんだろう、この感覚。この感情。このぐるぐるした気持ち。
いったいなんなんだろう…
「俺は、好きですよ。先輩のこと…」
「っ!!」
「好きです、先輩。」
これ以上、何も言うな。
「お願いだから…」
俺の中を乱さないでくれ。
「何も言うな…」
「え??」
これ以上言われると、俺は…
「もう、そういうことは言わないでくれ…」
「っ!!」
壊れてしまう。
「なんで??なんでですか!?」
自分が自分でなくなってしまう。
「先輩、俺は先輩が好きです。」
「っ!!」
「好きなんです。好き。大好き。俺は先輩が、」
「もう…言うな。」
「先輩??」
俺は、その場に崩れ落ちるようにしゃがんだ。
篠原はそのまま立ったまま。
俺を上から見下ろしている。
「おまえが俺に話しかけると胸が痛いんだ。」
「え??」
「おまえに好きって言われると、自分が自分でなくなる。自分がわからなくなる。変な気持ちが俺の中をぐるぐるする。」
「先輩。」
「篠原で頭がいっぱいになる。考えたくないのに、考えてしまう。」
「……」
「もう、嫌なんだよ。1人でぐるぐるして。嫌なんだ、こんな自分が。」
もう、わからない。
何を言ってるかすらもわからない。
「先輩、それって…」
閉じていた篠原の口がゆっくりと開いた。
そのとき…
≪♪ピンポンパンポン 2年B組水沢夕貴、1年E組篠原柊。今すぐ生徒会室に来てください。≫
放送が学校中に響いて、篠原の言葉を遮る。
この声は孝太だ。
「この声、孝太先輩ですよね??」
「あ、あぁ。」
「とりあえず、生徒会室行きますか。」
「そうだな…」
結局、篠原の言葉は聞けず。
そして、俺の気持ちはぐるぐるしたまま。
俺たちは生徒会室へと向かった。
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