アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
悪の罠 04
-
「でも…」
武藤の手が俺の顎に触れる。
グイッと顔を上げ、視線が絡み合う。
「本当、いつ見てもハクイ(美しい)ですね。」
フッと笑う。
その笑顔がなんとも憎たらしい。
「うるさい。からかうな。」
武藤の手を払いのける。
あまり近くにいたくなかったので、少し後ずさって距離をとった。
「別に、からかってませんよ。本音を言っただけです。」
「嘘言うな。」
「本当ですよ。中学の頃から思ってましたし。それに、柊も。」
「え??」
篠原の名前にドキッと胸が高鳴る。
鳴り止まない心臓。
止まれ…止まれよ…!!
心臓の音を抑えつけるかのように、心臓近くの服をぎゅっと握りしめた。
「どういうことだよ、それ。」
「え??あー…それはっすね、」
「何やってんの??」
武藤の次の言葉を待っていると、武藤じゃない聞き覚えのある声が聞こえた。
その声のほうに振り返ると、やっぱりそこには俺の予想していた人が立っていた。
「篠原…」
篠原が一歩一歩近づいてくる。
そのたびに鼓動の速さが増す。
服をより一層強く握りしめた。
「なんで、健と先輩が話してんだよ。」
「んな不機嫌になんなよ。ただ、見かけたから話しかけただけ。」
「あっそ。」
篠原は俺と武藤の間に割って入ってきた。
「先輩、健に用事があったんですか??」
「え??」
まだ疑ってん…のか??
篠原の顔が少し歪んでいるように見えた。
「いや、武藤とは、ただ話しかけられて話してただけで…。……用があるのは、篠原だよ。」
「…俺??」
「ちょっと聞きたいことがあって…」
武藤のほうにチラッと視線を送る。
すると、感づいたのか、「俺、邪魔者っすね。ごゆっくり。」とニッコリ笑って、教室の中に入っていった。
その瞬間、キーンコーンカーンコーンと予鈴のチャイムが学校中に鳴り響いた。
「あー…もう授業始まりますね。すみません、わざわざここまで来てくれたのに。」
「いや…」
「先輩は授業行きますよね??先輩が授業行くなら、俺も授業受けよっかな。先輩いないのに、サボっても暇だし。」
ニッと笑う篠原は、「じゃあ、俺教室に戻りますね。」とだけ付け加えて、教室に向かう。
その後ろ姿を見ると、なぜかたまらなく切なくなり、俺はとっさに服の袖を掴んだ。
篠原は驚いた表情で俺の顔を覗きこんでくる。
「先輩??」
本当に無意識だった。
無意識に体が動いてしまった。
……いや、これは無意識なんかじゃない。
ちゃんと話を聞かなきゃっていう気持ちもあったけど…
それよりも、今はとにかく一緒にいたかった。
ここまで知っているのにもかかわらず、素直になれない俺は、自分の気持ちに気づかないふりをした。
「ごめん…何でもない。」
手の力を緩めて、掴んでいた服の袖からスルッと手を離した。
「先輩。」
すると、次は篠原が俺の手を掴んだ。
「授業受けるのダルいし、これから俺とサボリましょっか。」
「え??」
「空き教室に行きましょう。一緒に来なかったら…」
篠原の顔が耳元に近づく。
息がかかってまた胸が高鳴った。
「あの写真バラまきますよ??」
今まではこの言葉に嫌悪感があったのに…
今ではその言葉を待っていたかのように…うれしい。
篠原のほうに視線を向けると、得意げな顔をして俺を見ていた。
その表情さえも憎たらしいけど、愛おしく思ってしまう自分がいた。
俺は、緩みそうになった頬を抑えながら、篠原の言葉にコクッと頷いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 147