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悪の罠 06
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「先輩??」
篠原の手が俺の頬に伸びる。
怖いッ!!
そう思った俺は無意識に篠原の手をはらってしまった。
「ぁ…」
「せん、ぱい??」
篠原の驚いた顔と悲しい顔。
それを見た瞬間、胸が苦しくなった。
だけど…
「ごめん、篠原。」
それよりも、胸の痛みよりも…
「おまえが何を隠してるのか知らねーけど、」
俺は…
「今のおまえとは一緒にいたくない。」
今のおまえが、今の篠原が嫌いなんだ…
「…え??」
篠原の消えそうな声。
その声に、今よりも胸の痛みが増した。
「何、どういうこと??」
「俺は、今のおまえが嫌いだ。」
「っ…」
「今のおまえは、本当の篠原じゃない。」
「……」
「俺の知ってる篠原じゃない。」
しがみついていた手を離して、篠原から離れる。
足にグッと力を込めると、足に力が入って、立てるようになった。
「また、後日喧嘩のことについて聞くから。」
俺はそれだけ言うと、篠原を残して、空き教室を後にした。
まだ、授業中…だよな。
どうしよう…
迷いに迷った末、俺は屋上に向かった。
屋上の扉を開けると、生暖かい風が俺の体を通り抜けていく。
もうすぐ夏だな…と感じさせるくらい生暖かい風だった。
「ん??」
グラウンドのほうから声が聞こえる。
グラウンドの見えるところに行くと、どこかのクラスが体育をしている最中だった。
俺は、何も考えたくなくてそれを眺めていた。
でも、結局頭の中に浮かぶのは、篠原のこと。
考えたくなくても、考えてしまう。
あいつは…篠原は何を悩んでいるんだろう…とか。
何を抱え込んでいるんだろう…とか。
考えれば考えるほど、苦しくなる。
だって、俺はたくさん助けてもらったのに…
あいつにたくさん、助けてもらったのに…
俺は、何もできていない。助けてあげられない。
だけど、少しでもいいから、あいつの抱えている荷物をわけてほしかった。
頼って欲しかった。
篠原を思うと、自然に涙が出そうになった。
苦しくて、苦しくて…今の篠原を考えれば考えるほど、苦しくて…
泣きそうになった。
でも、辛いのは篠原だ。俺じゃない。
だから、俺が泣くなんて…おかしいよな。
俺は、涙が出ないように、上を見上げた。
すると、俺の目には視界いっぱいのきれいな青空が広がった。
「俺って…そんなに頼りないのかな…??」
俺の声だけが、大きな空の中に消えていった。
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