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悪の罠 08
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「おまえは、頼りになる生徒会長だよ。」
「え??」
どこからか声が聞こえる。
でも、周りを見渡しても誰もいない。
空耳…かな??
それとも、俺が誰かにそう言って欲しいから…かな??
そう思っていると、「おい、夕貴。」と声が聞こえる。
でも、周りを見渡してもやっぱり誰もいなくて…
すると、「こっちこっち!!」と上のほうから声が聞こえた。
俺は、視線を上へと持っていくと…
「ゆ、佑介!!」
屋上にある、展望台のところから佑介が顔を出して手を振っていた。
「何やってんだよ。」
「んー…おまえと同じ。」
サボりってことか…
「なんでサボってんの??」
「えー、だって、こんな天気のいい日に教室にいてもつまんないじゃん??」
「ま、はるちゃんの授業だったら受けるんだけどねー。」と佑介は付け加えて言った。
佑介は、よく授業をサボる。勉強が嫌いだかららしい。
でも、佑介にははっきり言ってちゃんと授業に出てほしい。
生徒会でも小さな問題になってるし…
佑介は特に、数学が嫌いだ。
なのに、なぜかその一番嫌いな数学の授業、はるちゃんの授業だけは出る。
なんでかはわからないけど…
あ、ちなみにはるちゃんは、数学を教えている。
「夕貴は??」
「え??」
「なんでサボってんの??」
「え、まぁ…いろいろあって…」
「もしかして、例の後輩くんのこと??」
「え!?」
佑介の言葉に思わず大きな声を出してしまった。
「あ、もしかしてビンゴ??」
いたずらな笑みで俺を見つめる。
「まぁ…」
「ふーん。後輩くんの篠原ねー。」
「おまっ…名前まで知ってるのかよ…」
「まぁね!!」
へへんっと聞こえるくらい得意げに笑う佑介。
そんな佑介を見ると、自然に笑みがこぼれた。
「で、その後輩くんとは何があったの??」
「何って…」
何て話せばいいんだろう…
別に、佑介に話したくないわけじゃない。
むしろ、佑介に話を聞いてもらうのはありがたい。
だけど、何て話せばいいかわからない。
篠原の様子が変…とか??
でも、そんなこと言われても、”は??”って思うだろうし…
「喧嘩でもした??」
そんな葛藤を頭の中でしていると、佑介がさきに話題をふってくれた。
「うん、まぁ…そんなとこ。」
そして、葛藤の結果、俺はあんまり詳しく話さないようにした。
「ふーん。そっか。」
「うん。」
「おまえらって、ホント喧嘩多いな。」
佑介の言葉が胸に突き刺さる。
「したくて、してるわけじゃないんだけどね…」
俺は、今にも消えそうな声で言った。
そんな俺を見た佑介は、少し戸惑っていた。
「でもさ、喧嘩するほど仲がいいって言うじゃん??」
おそらく、俺のためにフォローしてくれようとしてるんだろう。
佑介の優しさが胸に染みた。
「そんな、フォローとかしなくていいからさ。喧嘩多いのは確かだし。」
「別に、フォローなんかしてねーよ。」
「俺の柄じゃねーだろ!!」と付け加えて言った。
確かに、祐介は自分の気持ちをストレートにぶつけてくるやつだ。
フォローなんかするタイプじゃない。
そういうストレートな気持ちを言ってくれるところが佑介のいいところであり、俺もそのおかげでいろいろ助けられたところがたくさんある。
「確かに、そうだな。」
俺は、少し笑みをこぼしながら答えた。
「そうだよ!!…つーか、まだ俺の話は終わってないんだぞー。ちゃんと話を聞け、生徒会長ッ!!」
にひっと笑う佑介。
その言葉に驚きつつも、俺は佑介のそんな陽気さに曇っていた心が少し晴れたような気がした。
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