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悪の罠 11
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授業終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響いた。
それと同時に、いろんな教室から生徒達の話し声が聞こえた。
「俺も、戻らないと…」
俺は、重い足を一歩一歩前に出した。
屋上から教室まで、そんなに距離はないはずなのに、今はなぜか遠く感じる。
おそらく、次の授業も受けたくない。教室に行きたくない。
そう体が拒否反応をしているのだろう。
それでも俺は、教室に戻った。
「夕貴!!」
教室の戻ると、さっそく孝太が俺のところに駆け寄った。
「篠原とは話せたか??」
聞かれるとは思ってたけど、今の俺にはあいつのことを話す気になれない。
「いや…」
あいつの話をしたくないからか、素っ気ない態度になってしまう。
「いやって…何かあったのか??」
孝太は優しい。
こんな俺を心配してくれる。
でも…
「ごめん、孝太。今は1人になりたいんだ…」
今は何も話したくない。誰とも関わりたくない。
そんな俺の気持ちを察したのか、「わかった。」と言って、自分の席に戻っていく。
が、「あっ。」と言って、また俺のほうに振り返った。
「そういえば、おまえ、今日は確かプール掃除の日だったよな??放課後、生徒会あるんだけど、出れそうになかったら、無理しなくていいから。」
そう付け加えて、孝太は自分の席に戻った。
孝太の言葉で思い出した。
篠原が俺を助けるために体育倉庫の扉を壊して、その罰として一週間、篠原と一緒にプール掃除をしていることを。
そして、今日でやっと7日目。プール掃除も今日で終わりだ。
7日前の俺は、この日を待ち望んでいたが、今の俺には、なんで今日なんだよ…と前の自分とは正反対のことを思っている。
正直、今の篠原には会いたくない。
それに、佑介の言葉が頭から離れない。
ずっと俺の胸に引っかかっている。
でも、さすがにすっぽかすわけにはいかない。
「はぁ…」
今日、何度目かのため息。
「俺も佑介みたいに、”この人だ!!”って思えたらいいのにな…」
自分にしか聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。
でも、今の自分には、その声が妙に大きく聞こえた。
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