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好きと嫌いのNo.1
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この世で1番嫌いって、ある?
食べ物でも、場所でも匂いでも、なんでも嫌いなものってあるよね?
「嫌い」が無い人なんて存在しない
なにかしら嫌いがあるはず
この世で1番好きって、ある?
なんでもいい。物でも食べ物でも場所でも言葉でも趣味でも。1番
たった1つ、何にも負けないくらいの好き
俺は、ある
誰にも何にも負けないくらいの好き
自信がある
好きで好きで仕方がない
はじめて人を好きになった、これは本当。
今日泊りに来ること、正直すごく緊張した。でも反面、嬉しくて、学校だけの短い時間じゃなくて、夜も朝目が覚めても、隣に居るんだって思ったらすごく嬉しかった。どんな話とかしたらいいのかな、とかすごく考えた。部屋に入れるのも緊張したし、背中触られたのも細い体見せられるのも本当に焦る。けど、「嬉しい」そばにいるだけで嬉しい。隣にいるだけでいい、好きってこういうことなんだね
…なのに
『ナオー!!うはは!!ナオー!!』
俺とあまり変わらない背丈
似たような声、同じ匂いと同じ目の色髪の色。極めつけはおんなじような絆創膏だらけの腕やら首
俺のワーストワン「倉田 ユウシ」
認めたくないし言いたくないけど、俺の、兄。学生ライフをすっちゃかめっちゃかにした張本人
小学生の時この人は中1、交わるはずなかった、の、に、友達を家に呼べば割り込んでくる、公園で遊んでれば連れて行かれる、どこ行ってもなぜか現れる。『ナオー!俺とあそぼー!』って。コレを繰り返した結果、友達だった人たちが俺から、離れた
孤立の始まり
その日から俺は、誰とも話すことができなかった。作文の読み上げも国語の音読も音楽の授業の合唱も出来なくていつも成績表の先生コメント欄には「自信を持って言葉を口に出してみよう!」って書かれる。
学芸会ですらセリフのない役をした
なんだと思う?
…夜のシーンに出る月…はは、木とかはお伽話だと喋るでしょ?
このときから言葉を口に出すのが苦手になった。そんなことで?って思うかもしれない、皆が離れて行く前までは俺も結構友達がたくさんいた。だからまた、皆と喋りたいしあそびたい、そう思って最初は勇気出して声をかけてみた、けど、みんな嫌がった。それが怖くてもう話しかけることすらできなくなって見事な孤立、中学生になっても変わらず、と言うより俺が周りに馴染めなくて、そして案の定あの人は俺にかまってきた。
それが嫌で嫌で仕方なくて、唯一それを気にせずに後くっついてきたのが一つ下の学年の幸大だった。でも途中で幸大は転校してまた1人…本当にこの人だけは心の底から、嫌いでしかたがない
「へぇえ〜ナオの兄ちゃん!…あんま似てないなぁ」
「あぁ!?似てるし!顔みろ顔、そのデカイ目は飾りかぁ?」
言っとくけど似てない。
絶対似てない
顔は、似てない
断固!似てない!!
腕組みしながらユウシを見るモモ、まじまじと、そして俺の顔も覗き込んでまたユウシを見て一言
「うはっ!ぜんっっぜん似てねぇ!!似てるって言い張るのは無理があるって!」
「はぁ!?無理っつったか!?このクソガキ!!」
ユウシが来ることでみんなが離れていった最大の理由が、コレ
口が悪い。
口調がキツイって言ったらいいのかな、中には泣き出す子までいたんだよね、口調がキツイ、巻き舌はいるわ声がデカイわ、常に喧嘩腰で上から来る物言い。だから小学生の時影で「ナオくんのお家はヤクザ」とか「違うよナオくんは外国の殺し屋の仲間なんだよ」とかどうしようもない噂を流された。兄なんだって誤解も解こうとしたけど、顔が全く似てないから…誰も信じてくれなかった。
この人はいつでも俺の前に現れる。
「クソガキ相手にムキになるなってお兄さん!…なんかあれだな?失敗した福笑いみてぇなタレ目ッ」
「おめぇぜってぇ許さねぇからナァ」
モモの顔を片手で鷲掴み「初対面でなんだ?キャン言わすぞくそガキ」
低くてデカイ声…この声と行動に、いろんなものハチャメチャにされた。
横から突然来て蹴散らして行く、心の底から
…大っ嫌いだ
ボスッ!
「うわっ!?だ!イッテェなナオ〜」
「いい加減にしてくれる。それ取りに来たんだろ、もう用は済んだでしょ」
投げたのは、ユウシが小さい時から気に入って使ってるゾウのクタクタの大きめなぬいぐるみ。俺のと、色違いでずっとある。ユウシはずっと俺と同じ部屋でずっっっっっと!一緒だった
だからようやく離れられて解放されて安心してたのもつかの間で、このゾウのぬいぐるみが置きっぱだったから、絶対取りに来る、覚悟はしてた。
けど、なんでよりによって今日かな
大好きな人と大嫌いな人が、ここにいる、最高な気分なのに最低な気分で今はどちらかと言えば、最低
「…おぉ、まぁそうだな、用事も済んだ、し帰るわぁ!ナオ学校頑張れよ!あとオメェミニキノコ!」
「はぁ!?ミニキノコッッ!ミニじゃねえっつの!あんたがデカイんだよ!!」
「ッセェ!今度失敗福笑いつったらただじゃおかねぇぞ!!」
「うーるせぇ!悪ゥございましたゴメンねオニィィサン!もう言いませんよー、バイバイ!」
「クッソうぜぇ!じゃぁな!」そうデカイ声で出て行った。ようやく
…俺
モモに最低な場面、みせちゃった。あからさまに嫌ってる態度、モロに出しちゃった、よね。はぁ…かっこ悪、気まずい、
「…あ、の、モモ、えと」
「なぁー、腹減ったナオ!晩めしだろもう、時間的に!」
「え、」
「ホラホラ、下!行くぞぉ〜」
俺の腕を掴んでグイグイ、階段を降りる。「飯セルフなんだろ〜?かぁちゃん言ってたじゃん。サッサ作ろうぜ!」振り返っていつもみたいに笑う。
…え、と。
「…その」
「あんだよ」
「や、その、聞、かないの?」
「はぁ?なにを」
「…。」
自分から振ったはいいけど、やっぱちょっと気まずい話だった。
でも、このまま何もなかったみたいな、スルーしてってのもなんかアレだし。でもほじくり返すのも、結局はっきりしないなぁ俺って
「あぁもう!ウジウジウジウジ!キノコ生えんぞ湿ったい!!」
「いひゃぃ…ごぇん」
右側のほっぺをまたいつもの何倍って位の力で引っ張られた。
引っ張りきって手を離してため息をついて、沈黙もなくモモが口を開いた
「はぁ、俺さ、こういうの根掘り葉掘り聞くの嫌いなんだよ。でも、ようはさっきの事、言いたいんだろ」
「…う、ん、て言うかその、ごめん」
「俺に謝ってどうすんだよ、昔何があったか知らねえけどこっちから話題振るようなことでもない、んなことわかってんだろ。だから俺からは何も聞かない、それだけだってば」
「そ、だよね」
「……ッ、はぁ〜、だぁッもう!!お前は!ハッキリしないなぁ!じゃぁコレだけ言っとく、俺から見てナオにも感情がちゃんとあって、表情も変わるし、意外と子供っぽいところある!そう感じたからな!」
腕組みして仁王立ち。
思ったことを言った、ほんとにそれだけって顔で俺を見るその顔は俺より下にある。
俺より下だけど普通の人よりは大きい身長なのに小さく感じる。けど何より大きい存在なんだ、俺にとって。
なんて言ったらいいんだろ、全く正反対のところにいる、俺が日陰でジメジメしてるとしたら、モモは日向で太陽にあたってる。湿ったところもなくていつも真っ直ぐで。
モモと会って生活もガラッとかわった。一つは、学校でいろんな人と接する機会が多くなった。知らない人にまでおはようって言われたり話しかけられたり、笑太くんと友達になったり。それから、家でも口をきくようになった。ねぇさんとも、最近喋るようになったし、意外な性格も見つけたり、意外とうるさかったり。
そしてなにより、「好き」を教えてくれた。
よく笑ってよく怒って時々落ち込んで…。素直なモモが太陽みたいで、人に見せたことない俺の姿、みっともないところ見ても真っ直ぐ、受け止めてくれる。俺なんかより、遥かに、ずっとずっと大きい。
大げさって言うかもしれないけど、モモは、俺にとってヒーローっていうか、世界そのものをガラッと変えてくれた救世主、そうおもってる。
「小さいね、モモ」
「あぁぁ!?はぁ!?このやろ!ナオがなんか言ってみたいにモジモジしてっから言ったのに、なんだそれマジで!!!!」
「いや、そう、じゃなくて、小さいのに、大っきい」
「なんだよどう言うことだよ」
「……あのさモモ、俺の話、聞いてくれ、る?」
俺を見上げる目が丸くなる。
ビックリしてる
でも、モモには俺のかっこ悪い話聞いてもらいたい。そう思ったんだ
どう思われるかな、言い訳じみて聞こえるかな…でもモモはきっと真っ直ぐ聞いてくれる。
少し俺の話を聞いてほしい
モモにはいろんなこと知ってほしい
こんな事思える人は初めてで、恥ずかしいような怖いような変な緊張があって少し苦しいような、難しい感覚。
さっきのユウシに対しての態度も、正直恥ずかしいしかっこ悪い。
思春期かよって笑われそう…
でも聞いてほしい
「おう、ナオが自分から言うなら、聞く」
「ありがとう」
晩ご飯の前に少しだけ、俺に時間を頂戴。そう言ったら
「へへっ、いいよ!」
そう言っていつもみたいに大っきい口が笑った。
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