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圭一side.
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だって、彼があまりにも似ていたから。
静かになった部屋の中で、僕は一枚の写真を手に持っていた。
えくぼの似合う可愛らしい笑顔。
地毛でもやけに明るい茶髪。
前髪を斜めに留めて、後ろで一つに結ばれた長い髪。
嬉しそうに細められた大きな瞳。
僕の、愛おしい人。
海斗くん。君は、彼女によく似ている。
彼女もそうだった。周りのことを、一番に気にかける人。
君はいい子だ。とても、いい子で。
だからこそ、怖くて。
入院させられた彼のように、壊れちゃうんじゃないかって。
壊れないで欲しい、君には。
無垢な笑顔を、きっと誰かが必要としているから。
壊れないで、どうか。
「あれからもう、2年かぁ・・・・」
昴くんが壊れたあの日から、もう2年。
僕はあの日のことを、絶対に忘れない。
昴くんが、そんな思いをしてたなんて知らなかった。気付かなかったんだ。
学校が楽しいかって聞いたら、いつも楽しいって笑顔で答えてくれたから。
勝手に、安心してた。
自分の息子が空虚感の中で過ごしていることも知らずにただヘラヘラ笑っていた。
傷付いてることも知らず、
寂しかったのも知らず、
理解してほしいと泣いたあの子を同情の目で見ていたんだ。
「・・・自分の、息子なのにね・・・・・」
また、写真に語りかける。
返事はない。だけど、わかるよ。君の返してくれる言葉。
それくらい、容易いことで。
それくらい、愛している。
「ねぇ、美紀(ミキ)」
『なぁに?圭一さん』
「昴くんは、僕を許してくれたかなぁ」
『うーん、そうね。許すとか、許さないとか・・・そういう問題じゃないんじゃないかしら』
「そうかなぁ」
『昴のしたことは間違っているわ。でも、私は恨んでないもの』
「うん、知ってるよ」
『私がもう少し頑張っていれば、あなたや昴が、苦しむこともなかったわ」
「うん、頑張って欲しかったなぁ」
『ふふ、ごめんね。私ももっと一緒にいたかった』
「うん、僕もだよ」
『でもね、今、あなたと一緒にいるのは、昴よ』
「・・・うん」
『昴と一緒にいるのは、あなたよ』
「うん」
『親子でも、人の感情は読み取れないの』
「・・・うん、そうだね」
『だからいいんじゃないかしら。許すとか許さないとかじゃない。圭一さんが昴の気持ちに気付けなかったのは、当たり前だもの』
「・・・そうかなぁ」
『相手がはっきり教えてくれないと、相手の気持ちなんてわからないわ』
「・・・うん、」
『だから自分を責めなくていいの』
「・・うん」
『私はあなたを愛してるわ』
「ありがとう」
『もっと傍にいたかった』
「うん」
『名前を呼んで欲しかった』
「うん」
『・・昴の笑顔、もっと見ていたかったなぁ』
「・・・・うん」
『海斗くん・・・・だったかしら?あの子なら、昴を幸せにしてくれる』
「うん」
『祈りましょう。昴の笑顔が、もっと増えるように』
「うん」
『あの子達が、笑って生きていけるように』
「うん・・・・うん、」
自分のことよりも、人のことを気にかける。
そんな優しい君を、僕は愛している。
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