アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
母さんは致命傷には至らなかったものの、腹部に刺さったナイフがかなり奥まで刺さっていたらしい。しばらく目を覚まさないそうだ。
(・・・僕のせいかな・・・・・・・・)
僕があんなことをしたから。現実から目を逸らしたくて、僕に会いたくなくて。
だから、目を覚まさないのかもしれない。
父さんはホッとしたような笑顔になって、でも、やっぱり泣いていた。
当たり前だ。恋人が、目を覚まさないんだから。
こういう時、僕と同じ立場になった時。そいつはどうするんだろう。
泣くのか、怒るのか、笑うのか。
”普通”なら、泣くんだろうな。
ごめんなさいって謝って泣くんだろう。
でも僕はそれができない。
「・・・・・・・・・・・・・・・ごめん、なさい・・・・・・・」
謝っても涙が出ない。出そうと頑張ってもどうしても出ない。
涙って、どういう時に出るんだっけ。
次の日も、また次の日も。
何日経っても涙は出なかった。
「昴くん、何も心配しなくていいからね。母さんはきっとすぐに目を覚ますから」
鼻を赤くした父さんの言葉は頭の中を通り過ぎてく。
「昴くんのした事は、赦されることじゃない。でも、僕は・・・父さんは、君が必死だったんだって、知ってる」
抱きしめられた時の、あの温かさも。
「きっと母さんもわかってくれるよ」
髪の毛についた、涙の滴も。
「わかるわけ、ない・・・・・・・・・」
僕に注がれる優しさも。
「わかるわけないだろ!!!!!」
僕は全部、否定した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
21 / 77