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目を開けると、白い天井。少し硬いベット。
部屋に充満する消毒の匂い。辺りを見渡すと暗い。
「………」
ふと手元を見ると俺の手を握り、ベットに突っ伏して眠っている和樹さんがいた。
(俺、何してたんだっけ)
だんだん頭が冴えてきて、あのことが脳にフラッシュバックする。
思い出した途端、息が苦しくなった。
「はっ、はぁっ、はぁっ、」
吐き気が襲ってきて、すぐさま部屋に設置されていたトイレに駆け込んだ。
それに気づいた和樹さんが慌ててナースコールを押したあと、俺に駆け寄った。
「祐、祐!大丈夫?」
そう問われても返事をする余裕はなく、ずっと吐き続けている俺の背中をさすった。
「おぇ、ゲホッ、はぁっ、う"っ、」
やっと看護師が来て、最後まで吐かせた後、過呼吸状態の俺に薬を飲ませ、深呼吸するように言った。
「はぁ………はぁ………」
「大丈夫ですか?ベットまで付き添いますね」
そういって肩を貸してくれた。
「橋谷さん、ちょっと……」
和樹さんになにやら耳打ちしている。
不思議そうに首をかしげると、心なしか深刻そうな顔で俺を見た。
「祐?大丈夫?」
ぐったりしてベットで寝ている俺に和樹さんが心配そうに話しかけた。
吐いたあとだからなのか、もう既に体力を使い果たしたのか、声が出なかったためコクコクと頷いた。
「まだ3時だけど朝まで寝る?」
頷くと手を握っておやすみと言った。
きっと寝付くまで寝ないで居てくれるんだろう。
安心して目を閉じた。
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「草薙さん、起きてください。朝食持ってきましたよ」
看護師の声で目が覚めた。
「橋谷さんはお仕事があるそうなので、帰られましたよ」
少し寂しかったが仕事なら仕方ない。
そうなんですね。と言おうとして違和感に気づいた。
「……っ」
(声が……出ない?)
看護師にその事を身ぶり手振りで伝えると
「……お医者さんを呼んできます。…少し待っていてください。」
やはりと言ったような顔で部屋を出て呼びに行った。
医者に見て貰ったところ、この間の事があったため、ショックで声が出なくなったのだろうとの事だった。
渡された紙に治るんですか?と書くと、自然に治ることもあるが、治らず、どうしても喋りたいのなら手術が必要だと言われた。
和樹さんには内緒にすることにした。
きっと自分を責めると思ったからだ。
その日は食事も喉を通らず、病院食もほぼ残すことになった。
夕方、和樹さんが仕事終わりのスーツ姿でお見舞いにやってきた。
「祐…気分はどう?」
なんとも言えず、反応しなかった。
ベットの横にある椅子に座って俺の手を握る。
冷たい水が手に落ちてきて、不思議に思い、和樹さんを見ると泣いていた。
「!?……っ……?」
声が出ないためどうすることも出来なくて、ベットから少し降りて和樹さんを抱き締めた。
「ゆうっ、ヒック、、ぼくっ、ぼくがっ」
嗚咽のせいであまり聞き取れず、落ち着かせるために背中をさすった。
暫くして落ち着いたのか、ゆっくりと話し始めた。
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