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『疑問』
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時は夜の11時を刻んでいた。いつもなら帰っているはずの人が帰らない。
「遅いな…」
一人不安がとれぬ様子なのは雨だった。
「早く、かえってきて…」
家の外で
待ち人をまつ。
雨にとって緋色はなくてはならない大切なひとで。
そんな緋色があんな風に静かに怒るのは初めてだった。
----きらわれたくない。
身を丸め自分を抱え込むようにしゃがみこみ
ひたすら彼の帰りを待つ。
かれが なけば あめ が ふる
久しぶりに空は
自分の意思とは関係なしに
・・・・・
雨を 降らされた。
「緋色、どこへも行かないで…独りは嫌だ」
静かに降る雨が
雨の体を濡らしはじめた。
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「………雨が泣いてる」
窓をうつ雨音に
式は反応した。
「行かなきゃ」
「ダメだよ」
鋭い声で制止したのは刹だった。
「この雨の感覚、忘れたワケじゃないでしょ?雨を止められるのは僕たちじゃない。」
雨の雨を止ませるのは
この家では緋色しかいない。
昔も、今も。
(緋色兄さん一体どこへ…)
『どういう繋がりかは知らないが…』
あの日の雪都の言葉が蘇る。
(確かに緋色兄さんと雨の繋がりが、わからない。
緋色兄さんは雨に依存している。
それははっきりとわかる。
何故…?いつ、二人は出会った?)
浮かんだ疑問は刹のなかで
膨れ上がるのであった。
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