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『掟』
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「……緋色。」
式の問いかけに緋色はためいきを吐いた。
「……もう元には戻れなくなる。たとえ雨がどう受け入れようとも
俺は一切手出ししない。いいね?」
ゆっくりうなずく式に緋色はまた
ためいきを吐き、部屋を出ていった。
白葉も後に続き出ていく。
「式。”全て”って……?」
「雨が知りたがってること。
俺と雨とであった日のこと。」
オレの知りたがってること……だけど
「式、覚えていないんじゃ…」
確かにあの時式は言った。
俺も覚えていないのだと。
だから追求できなかった。
「ごめん。俺は全部覚えてる。
忘れたくても 忘れられない。
でもいつか話さないといけないと思ってた。
それを知ったら今迄みたいには
仲良く暮らしていけなくなるなら。」
式の真剣な目に、声に
俺は何も言えなくなった。
聞いたらきっと何かが変わる。
そして……今迄どおりにはいかなくなる、それはわかってた。
「雨……それでも、聞きたいと思う?」
俺は決意を固め頷いた。
数秒たって
式は話を始めた――。
「雨はまだ吸血鬼のことを知らない。だから教えてあげる。
組織を、そして仕組みを。
オレたちがまだ執行組織にいたとき。まだ俺は幼く、父さんの動く駒だった。
執行組織とは 吸血鬼全般を取り仕切る組織。
昔も 今も上級吸血鬼は人間を食している。
素性はばれてはならない。
もしばれたら始末すること。
人間と必要以上に交わってはならない。
そして 上級吸血鬼は何があっても
仲間を裏切ってはならない。
掟に背いた吸血鬼は
執行組織の人間が排除する。
これが掟。
オレの父さんは執行組織の
トップだったんだ。
憧れだった。
オレはあの人のようになることを目指していた。
だから俺は―
人間も吸血鬼も 掟通りに始末してきた。何人も。何百も……。」
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