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『昔話をしようか。』
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それから何事もなくいつもどおりに皆夕飯を終えそれぞれの、部屋へと向かった。
そう、何事もなかったかのように。
1人ベランダに出てタバコに火をつけるそれは
白葉だった。
「気になるんだろう?白葉。」
「なんや音もなく現れんでよ、緋色。」
ふー、と口から出る白い煙は暗闇へと紛れる。
「お前がタバコを吸うときは珍しく頭を悩ませてる時だろ? 」
「珍しくってなんや珍しくて。」
苦笑いしながら頭をかけば
愉快そうにそれを見る緋色と目が合う。
「お前少しは、っまぁええわ。俺は何もでけへん。最初に言うとく。」
「このままでいいはずだ。」
呟く音量のそれは独り言か
白葉に向けてか。
「雨が俺のとこにいる。それだけで、いいはずなんだ。」
何も答えず
半分より少し長めの所で
白葉はタバコの火を消し灰皿へと放り投げた。
「結果それが雨を苦しめてしまったのかもしれないけど。
それでも、雨が欲しいんだ。」
「‥‥なんでそない雨に執着しとるん。」
「‥‥」
数秒悩みそれから前を向く緋色と白葉の元を少し冷たい夜風が吹き抜けた。
「孤独だった俺と
同じようにあの子も孤独だった。」
――――お兄さん泣いてるの?
「昔話をしようか。」
それは彼と雨の出会い。
全てを狂わせるきっかけとなる出会い。
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