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『イルミネーション』
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「西野くん。」
突然かけられた声に慌てて顔を上げると。
「副…社長…さま。」
俺が睨み付けていたパソコンのディスプレイの上で頬杖を付いてる…大事な…恋人、がいた。
「…何かご用でしょうか。」
「いえ。良かったら一緒に帰らないかと思いまして…」
「帰りません、てか帰れませんから!」
バンッ!
と、机の上のデータを両掌で思い切り叩きその勢いのまま立ち上がる。
そして…。
「……ごめんなさい。」
そのまま…頭を深々と下げた。
◇◆◇◆◇
年末も押し迫った今日、祝日にもかかわらずチーフからの呼び出しがかかった。
俺の手掛けた仕事に不備があったのだという。
まさかそんなハズは…と疑い半日かけて調べ直してそのミスを発見した。
信じられない程の凡ミス具合に驚き焦って修正をかけていた時に…今のこの状態になったわけで。
「あの…」
今だに上げられない頭に温かな手の感触。
そしてそれは…優しく俺の髪を撫でて体中を縛り付けていた色々な感情をあっと言う間に取り去ってしまった。
「温かいココア、飲むでしょう?」
もっと触ってて欲しかったのにその手はスッと離れて代わりに少し温くなった缶を手渡してくれて。
俺は…。
「…いただきます。」
そうとだけ言って静かに缶のプルタブを起こした。
訪れるのは…静かな時間。
いつもはそれなりのスキンシップを求めてくるこの人だけど、こういう時はちゃんと“上司”として“部下”が仕事をしやすい環境を整えてくれる。
それに気付く度俺は申し訳なさと自分の未熟さにヘコんだりもするのだ。
◇◆◇◆◇
「…よしっ!」
手直しを終えプリントアウトした資料にディスクを付けて封を閉じる。
それをチーフの机に置きホッと息を吐いた背後の気配を感じ…た時にはすでに抱き締められていた。
「西野くん…もう名前で呼んでもいいですか?」
甘えるような声に頬が緩む。
小さく一度頷くと…俺の大事な人は抱き締める腕を丁寧に回し直して。
「仙…お疲れさま。」
そう言って頬にキスをくれた。
その腕を解いて正面に向きを変え…優しい眼差しの小高さんを見つめて。
「お待たせしちゃってすいません…慎二さん。」
背伸びをして彼の唇にキスをした。
「…仙…。」
離れた唇が俺の名を呼ぶ。
その声に艶が増しドキドキと高鳴る胸を押さえながら俺は瞳を閉じた。
…すると。
グイッ!
抱き合っていたハズの身体が呆気なく剥がされ掴まれた腕が引かれる。
何事かと瞬きを繰り返す俺に小高さんは最上級の笑みを向けて。
「仙、イルミネーションを見に行きましょう!」
言うなりスタスタと歩き出した。
「はっ?えっ?意味分かりませんが…。」
「ここに来る途中の公園が全面キレイに飾られてましてね。」
再度振り返った小高さんは…さっきよりも優しい笑顔を俺に向けて。
「これは是非とも仙と見たいと思い途中から目をつぶって来たのですよ。」
そう言って屈託ない子供のような笑顔を見せた。
…可愛いなぁ。
そして…
嬉しいなぁ。
…けど。
途中で目をつぶった……って、小高さんは車でここまで来たハズ。
ツッコミたいけど…その俺の事を思ってくれてた気持ちが嬉しいから、説教はイルミネーションを一緒に見た後で。
前を歩く大事な人を見つめてこれから見るキラキラな景色に浮かぶ彼の笑顔を思い浮かべて俺は…緩む頬を気付かれないよう掌で隠した。
‐END‐
こちらは当サイトの3周年記念お題募集からのお話です☆
お題From:ほか弁さん
再々up/2015.11.23
2020.1.5.
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