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11 /あとがき。
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高校を卒業した僕は近所のファーストフード店で働きだした。
就職と決めたものの…高校在籍中にどうしてもそこから先を決めきれずにフリーター生活を選んだからだ。
「いらっしゃいませ。」
ウィンドウが開く度に愛想を振り撒きハンバーガーとスマイルを売る。
そんなこと…高校時代ではできなかったけど、できるようになった今は逆に時の流れを感じるほどで。
「いらっしゃいませ。」
今日も変わらずウィンドウの開く音に反応し声かけをしてお客様を迎える。
いつもの通り、ペコリと頭を下げて上げる………と。
「久し振り。」
そこには……。
「み、」
……三田、が立っていた。
あの頃よりも大人びた顔付きになり表情は柔らかくなっていて…髪も少し伸びてて。
一段高いところで仕事をしてるからわからないけど…多分、背も伸びてる。
あまりに久し振り過ぎて僕はしゃべることができずに黙って三田をみつめた。
すると彼はクスリと笑ってお持ち帰りのチーズバーガーセットを二人分頼んでから。
「支払いは、これで。」
そう言ってハガキを一枚出してきた。
「え…あの……」
「大馬鹿野郎が最後に置いてったハガキ。」
なんだと思いながら裏をめくってみると……そこには。
「好……田の…」
差出人の箇所に好田の名前と他県の住所が書いてあった。
「アイツに会ったら言っといて。俺は新しい恋してるから心配すんなって。」
カウンターに置いたご注文の品の入った紙袋を取ると三田はニコリと笑って僕をみてからウィンクをしてよこして。
「俺、彼氏と一緒に住んでるからもうあの家にはいないけど…アイツが帰ってきたら声かけて。連絡先はそのハガキに書いといたから。」
そう言って僕に背を向けた。
「あの…っ…三田…」
焦って声をあげた僕にチラと顔だけ向けると三田は聞こえるか聞こえないかなくらいの小さな声で。
「三好…意地悪言ってごめんな。」
そう言って店からでて行ってしまった。
彼は外に出ると背の高い男の人の元に走っていき…その“彼”の容姿は遠目なら分からないくらい好田によく似ていた。
「三田…」
僕は…久々に会った懐かしい友達になにも言えなかった自分に自己嫌悪した。
そして三田がくれたハガキをポケットにしまうと仕事の終わる時間をただひたすらに待った。
◇◆◇◆◇
薄暗くなった道を歩きながら目印の建物を探す。
「確か…銭湯があるって…」
ブツブツと言いながら歩き続けると…開けた視界の先に高い煙突が姿を現し僕はそっちに向かって駆け出した。
電車を降りた時に駅前の交番で好田のハガキをみせてそこまでの道順を聞いた。
それ通りに歩いてきてるから…目的地まではもうすぐ、なはず。
ドキドキと胸が高鳴る。
こんな気持ちは…どのくらい振りだろう?
そう思いながら銭湯の角を曲がる、と。
「……あった!」
目の前には小さな平屋の並ぶ住宅地があった。
一軒一軒を確認しながら奥に進む。
好田のお母さんは離婚した時に姓を戻さなかったっていうから…。
「あ…」
一番奥の家の表札をみて息が止まる。
そこには僕が探していた…僕の愛しい名字が記されていて。
「よしだ…」
不覚にも僕は潤んでしまい慌てて目元を手の甲でグッと押さえた。
ガシャン!
背後で何かの倒れる音がして驚いて振り向く。
「あ……」
するとそこには…忘れるはずのない大切な人が立っていた。
「よし…っ…」
名前を呼ぼうとして声が詰まる。
僕の知っている好田よりも凛々しくなった好田は…僕をみて何度も瞬きをしてから。
「三好…」
愛おし気に僕を呼んで腕を伸ばしてきた。
僕は迷わずその手を取って握り…好田の足元に倒れている自転車を跨いで渡り彼の胸に顔を埋めた。
「三好…会いたかった…」
耳元で囁かれた声に涙腺が崩壊しかける。
でも…まだ僕は言わなきゃいけない言葉を好田に伝えてないから。
「好田…僕も会いたかったよ。…好田、好き…」
何年もかかってやっと今、言えた。
これを言いたくて…伝えたくてずっといたから僕は今、それが叶ってとても嬉しい。
「…三田から聞いたのか?」
小さな呟きに一度頷く。
三田が僕に手渡してくれたのは…好田が彼に託した“願い”。
『悪いのは俺だ。ごめん。三好のこと、頼む。』
たったそれだけの…僕を案じての短い言葉。
なのにそれを…自分を好きだという相手に渡した好田は凄いと思う。
そしてそれを許した三田も。
だからこれを渡してくれながら三田は好田を“大馬鹿野郎”と呼んだんだと思って苦笑いがでた。
「好田がきたら呼んでって言ってた。」
「そうか…」
低く響く声に安らぎを感じる。
やっと掴んだ好田の手を離さないように握り直して…僕は彼にもう一度“ちゃんとしたキス”をねだった。
‐end‐
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あとがきです。
このお話は自身初の三角関係?でした。
プロットを立てた当初、似たような名字を目にした時がありましてその頃から温めていたお話です。
温めていた当初はみんなもっとシャキッとしていたような…(苦笑)
なんかグダグダで申し訳ないです。
ここまで読んでいただいてありがとうございました☆
by.えりな/2013.1.20
再掲載 /2015.9.18
再々掲載 /2016.12.18
このお話はとあるBL小説のコンクール的な物に出品し、落選した物です(泣)
もう少し長かったのですが文字数制限があったためだいぶ削ってしまったのですね………今にしてみたら消してしまった原本が自分でも気になります。(苦笑)
2020.2.14.
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