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F-0130 ユウマ (7)
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「あれ・・・。」
「ん?」
さっと指をさした方向を見ると、ブランコがあった。乗りたいのか聞くと、きょとんとした顔を見せた。
「ブランコ、乗る?」
「ぶらんこって・・・あれ?」
次は滑り台を指さした。公園に来たことがないのか、それとも連れてきてもらえたことがないのかは知らないが、遊具の名前がわからない程度には未知の世界に迷い込んでいる状態なのだろう。ものの名前がわからない、初めて見たと発言するコドモは珍しくないが、やはり心配にはなる。
「それは滑り台。ブランコはあれ、さっき指さしたほうだよ。乗ってみる?」
「・・・いたい?」
「痛くないよ。」
「あ・・・乗ってみたい、です。」
ブランコを使用していた親子は楽しそうにはしゃいでいる。その姿を見たユウマは複雑そうな顔を浮かべ、その親子をじっと見つめていた。
俺たちに会釈をしてブランコのスペースから立ち去った親子は手を繋いで帰っていった。その姿を見送る前にさっさとユウマをブランコに乗せると、興味津々といった顔で俺のほうを振り返った。しっかり捕まるように伝え、背中を押してユウマの乗ったブランコを揺らす。
「わっ、わあっ・・・ハルヤさんったか、たかいっ。」
「こわい?」
「ううん、きもちいいっ。」
どうやら、初めてのブランコはユウマにとっていい思い出として記憶に残ってくれそうだ。きゃあきゃあと楽しそうに騒ぐ様子は、どう考えても幼すぎて、先ほどいた子供と同じくらいの年齢に感じた。
ユウマが満足をする前に、その背中を押す俺のほうの体力に限界が来た。終わりを伝えると、ありがとうと嬉しそうに伝えてきた。
「あっ・・・あの・・・。」
「ん?なに?」
「手・・・。」
「手?・・・ああ。なに?どうしてほしいの?」
意地悪にそういうと、顔を真っ赤にさせた。俺の服の裾を掴んでもじもじと口ごもるユウマを簡単には許そうとは思わない。きちんと口に出すまで待とうとしゃがんで顔を覗き込むと、ようやく口を開いた。
「手・・・手を、繋ぎたい、です。」
「うん。だから?」
「・・・繋いでも・・・いいですか?」
顔から蒸気でも出そうなほど真っ赤にさせている姿が愛おしくて、ぎゅっと手を掴むと、フフフとおかしそうに笑った。その顔ははじめて出会ったときとは比べ物にならないほど、人間らしい顔をしていた。
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