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F-0130 ユウマ (16)
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早朝に物音で目を覚ました。あのまま寝落ちたユウマを寝室のほうへ寝かせていたはずだが、隣にいない。台所へ足を運ぶと人影が見えた。
「ユウマ?」
「はわっ」
「なに、その反応。おはよう。」
「あ・・・ハルヤさん・・・おはようございます。」
台所の様子を見て、信じられないほど感動した。ユウマが、朝食を作っているのだ。こんなに早く成長する子、いたかな。思考を巡らせても思いだすどころかいなかったと再確認する。お湯を沸かしてインスタントのスープを作ろうとしているのはわかる。それ以上に前回俺がやったサラダとパンまでもユウマ一人で作っていたのだ。
「・・・すごいね。」
「あっ・・・勝手に・・・。」
「ううん、いいよ。感動してるだけ。」
「感動・・・?」
「そう、ちゃんとできてて。ユウマが成長していくのが、うれしくて、ね。」
そう言うと作業の手を止めて下を向いた。顔を歪ませて困ったような表情を浮かべる。壁に寄りかかっていた俺は、ぎょっとしてユウマに近づいた。顔を覗き込むように軽く屈むと、服の裾を掴まれた。
「えらい?おれ。」
「えらいよ。ちゃんとできてて、えらい。」
「そっか・・・。」
嬉しそうに笑って、作業を再開した。すべてが終わったころに一緒にダイニングテーブルへ料理を運ぶ。ニコニコ嬉しそうに笑っているユウマは機嫌がいいらしい。
「おれね、何かして褒められたの、初めて。」
「そうなんだ?」
「うん、余計な事しないようにっていつも考えてたから。」
そう言って笑ったまま左目から一筋の涙が落ちた。悲しい、怖いと言って泣くのは何度も見てきたが、嬉しいと泣くのは初めて見た。自分一人で作ったご飯をおいしいね、と言って笑うユウマに同じように笑って返す。なんだか自分まで嬉しくなって少し泣きそうになった。
「ひいっ。」
「大丈夫だから。」
次にユウマが怯えているのは掃除機だ。大きい音に怯えて掃除機を持つ俺の後ろに隠れるのに苦笑いをする。一室を手本でやって見せると、だんだんと慣れてきたのか俺の行動をきちんと見ていた。
ソファの下や部屋の隅など掃除機をかけて、最後にゴミを捨てるところまで見せると、自分から掃除機に手を伸ばした。
「ボタンはこれ、ほら。」
「はい。」
ユウマは器用なのか、一回見ただけで俺と同じことを難なくやって見せた。壁際に寄ってその様子を見ているだけで、指示はほとんど出していない。それに感心していると、終わったのかゴミを捨てに行って掃除機を片付けた。
「えらいね・・・よくできました。」
「あっ・・・はい。」
照れたように笑うユウマはやはり機嫌がいいようだ。
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