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1話
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「今日飲みに行かへん?」
そう誘われたのは俺が会社に来てわずか5分後。
おはよ圭ちゃんなんてゆるいあいさつをしてきた彼がそのままのゆるゆるなノリで言ってきた。
「おはよう浩輔くん。今日は遅刻しなかったんだね」
「そやねん、今日は目覚ましが鳴ってくれたんよ」
てかお前な、俺上司やし、と軽めに叩かれる。そろそろ仕事始めないとせっかく早く来れたのにまた部長に怒られちゃうよと言うと慌てて席に着く彼。
席に着いても飲みのお誘いの返事を聞きたそうにちらちらとこっちを見てる。
いつものとこでねとLINEを送ればすぐ返ってくる彼お気に入りの漫画のスタンプ。
こんなに早くから飲みの予定を入れようとするなんてもしや相談事でもあるのかな、と考えながら定時に仕事が終わるように今日やることを確認する。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「圭ちゃんお疲れ!何飲む?」
「じゃあとりあえずビールで。浩輔くんは弱いんだからウーロンハイにでもしておきなよ」
「ええ、俺あんま好きやないねんけど」
「潰れたら世話すんの俺なんだから」
ぐむむと唸って結局ウーロンハイとビール、それとおつまみを店員さんに頼む。
いつもなら他愛もない話をしながら注文したものが届くのを待つのに、今日はなんだか機嫌があまり良くない。やっぱり悩み事でもあるんだろう。
「浩輔くん、悩んでることあるんでしょ」
と1杯目のビールを煽りながら言えばうぅ、と曖昧な返事が返ってくる。
大体のことは自分からべらべらと話す彼にはやっぱり珍しい。
「実はな、俺彼女おるやん?そんでな、その、楓とあんまり上手くいってなくて、な?」
目を伏せながら話し始めた彼。恋愛初心者て訳でもないのにちょっとごたついた位でこんなにしょげるなんて犬みたいだなぁと思う。
「ふーん、それで具体的にどういう感じなの?」
日本酒を店員さんに頼みながら深堀りしていく。
「あんま大したことやないけど、なんか楓が最近俺に構ってくれんくてな、どうしたんやろと思ったんや」
それはちょっと気になるかも。楓ちゃんといったら浩輔くん大好きでよく犬みたいにじゃれついてる可愛い彼女さんだ。俺も結構浩輔くんに甘えてるとは思うけど、あそこまで大好きオーラ出してて愛されるより愛したいタイプの浩輔くんとは相性バッチリじゃん、と皆で囃し立てた記憶がある。
「んー、でも構ってくれないってだけじゃ楓ちゃんも忙しいからかもしれないし、そんな落ち込むことないんじゃない?」
「そうか?俺女々しいからなぁ」
「そうかもね。お酒も弱いし」
「それあんま関係ないやろ!全くお前は先輩だっちゅうのにナメた奴やなぁ」
「えーひどくない?浩輔くんが俺を甘やかすからじゃない?」
それはあるかもなぁと既にお酒が回って笑い上戸になった浩輔くん。自分から相談持ちかけたのに肝心の彼女との話はどこへやら、彼がこの間行った旅行の話をし始めた。
旅行の話がいつの間にか実家の親の話になり、部長の悪口に変わっていった。
こうやって話がどんどん変わるようになったら酔いを覚まさせないと、自分でどんどん次のお酒を頼み始めて収拾がつかなくなるからとりあえずお水を飲ませないと、と彼のグラスをとる。
「ねぇ、そろそろやばいんじゃない?一旦お水飲んでよ」
「あー悪いな圭ちゃん。いつもお前にセーブさしてもろて」
一緒に飲みに行くようになってから2年も経てばもう慣れてるよと返せばへらへらと笑う彼。
「なあ、まだ圭ちゃんは飲み足りんやろ?明日休みやし、家で飲もうや」
「家帰すの面倒だから浩輔くんちでならいいよ」
「そんぐらいええよ。ならお会計しといてや」
彼はがさごそと財布を取り出して俺に渡した。俺の方が3倍ぐらい飲んでるのに、相変わらず気前がいいなぁと思いながら伝票を持ってレジへ向かう。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「あー、顔真っ赤になってる」
「うるさい!俺まだ飲めるし」
家に着いて缶を1つ2つ開ければもう浩輔くんは完全にベロベロ。許容量は多分とっくに超えてる。
「そんな飲んだら二日酔いきついでしょ?ほら、俺も少し酔ってきたしもう帰るからね」
空き缶を片付けて帰る素振りを見せるといややと唸ってこっちを恨めしそうに見てくる。
大きくて酔いで潤んだ目で見つめられて思わず目を逸らしてしまう。
「あのな、」
顔を机に乗せたまま彼は、俺の酔いが醒めるような衝撃的なことを話し始めた。
「ずっと黙ってたんやけど、俺、実はゲイやねん」
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