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楓は雅琴の髪を撫でながら何かを思い出したようにあ、と声を上げた。
「雅琴君、僕ちょっと食材買ってくるよ。雅琴君は部屋でゆっくりしてて。呉々も、外には出ないようにね」
そう念を押されて雅琴は呆れたように笑いながら頷きを返す。
楓は絢介以上に心配性かもしれない。
「分かった。気をつけて行ってきてね」
「うん、それじゃ。行ってきます」
楓は雅琴の唇にそっとキスを落として寝室から出て行った。
「あはは…全く、心配性なんだから」
雅琴は一人になった部屋の中で小さく笑う。
心配ばかりされるのも困りものだが、自分を気にかけてくれる人間が傍にいるということはとても幸せなことなのだと雅琴は知っている。
だからこそ、それを分かりやすく体現している楓を見ると少し面白いなと思ってしまった。
「えっと…取り敢えず抑制剤だけは飲んどこうかな…、楓さんにあんまり負担かけたくないし」
雅琴はそう呟いてゆっくり身体を起こすと不意に視界が大きく揺らいで額を押さえる。
「…っ…、今回酷いな…」
先程までは番である楓が傍にいたお陰で気が付かなかったが、昨日から続く吐き気や頭痛も伴う発情期前の強い症状が更に悪化しているように感じた。
番契約をしている為他のαが雅琴のフェロモンにあてられることはないが、それでも発情期自体が治まる訳では無い。
どう足掻いても、この苦しみとは一生付き合っていく必要があるのだ。
「兎に角薬ーー」
そう言いかけながら、棚の上に置かれた薬な手を伸ばした雅琴だったが、突然その身体は再びベッドへと沈みこんだ。
ーー何が…起きて…、
身体の力が全く入らない。
心臓が痛い程に跳ね、かなり速いスピードで鼓動を刻んでいく。
「ッ…、まさか…っ」
ーーヒート…、
そう自覚した瞬間に雅琴の身体は発熱し、あまりの息苦しさに溺れた様な感覚に陥った。
今までの発情期でもこんなに酷いものは初めてのことだった。
一瞬で理性が飛んだ雅琴は荒々しい呼吸を繰り返しながら、壁を這うようにして部屋を出る。
「楓、さ…っ…!た、たすけ…、…っ」
朦朧とした意識のまま、雅琴は愛する番を探してーー玄関のドアを開けてしまった。
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