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数日後、大学終わりにキャンパス内を歩いていた翼を後ろから聞き覚えのある声が呼び止めた。
翼が振り返ると大学の友人数人が駆け寄って来ていて、翼は軽く手を振る。
「皆どしたの?」
「これからどっか遊びに行かね?」
「あー、ごめん。今日は先約があるんだよね」
「んーそうかぁ、残念」
「また今度埋め合わせするからさ」
そう言って手を合わせ友人達と別れると大学の門の前に止まっていた車に駆け寄って窓をコンコン、と叩く。
そして運転席に座っていた清治に視線を送って助手席に乗り込んだ。
「おかえり、翼」
「ただいまー。ってあれ、要まだなんだ?」
「あぁ。他用があるから後で合流するってさっき連絡がきたよ」
翼がそっかーと返しながらシートベルトをしめると、父はサイドミラーを確認してアクセルを踏んだ。
「楽しみだなぁ、遂にご対面ってカンジ」
「なんだ、翼お前そんな楽しみにしてたのか?」
「そりゃあそうだよ。血脈関係無しにしても弟が出来るんだから。俺ね、ずっと弟欲しかったんだよねー。だから悠のことはうーんっと甘やかしてやりたい」
翼は窓の縁に肘をついて外を眺めながらふふ、と笑った。
翼からそんな話を聞いたのは生まれてから初めてのことだった。
清治はその様子を少しばかり驚きつつ横目で見てそれから幸せそうな笑みを浮かべる。
「そうか、良かった。少しずつでも家族になっていけるように、皆で悠君のこと、そしてお互いのことを支え合っていこう」
「そーだね」
翼は小さく頷いて流れる景色にぼんやりと視線を向けた。
「…早く会いたいな、”千歳 悠”クン」
翼は鼻歌交じりにそう呟いた。
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