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6.
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「…悠…?」
何かに引っ張られたかのように目を開けた翼は掠れた声でそう呟いていた。
ゆっくりと手を持ち上げると色々な管が繋がれていて動かしづらかった。
翼は酸素マスクを取り重い身体を起こすと自分の身体をに巻かれた包帯が視界に映り、ゆっくりとその頭が働き出す。
ーー確か…、要と派手な言い争いをして、気分転換に悠を連れ出して…それで…。
そこまで思い出したところで翼の目が次第に見開かれていき、脳が一気に覚醒した。
あの時、道路側に倒れそうになった悠を咄嗟に庇った。
そして悠の代わりに車に轢かれた翼は朦朧とした意識の中で悠の姿を捉えていた。
最後に見た悠の顔を思い出して翼は思わずベッドから跳ね起きる。
「悠…!…っい…、」
立ち上がろうとして身体中に走った激痛に翼の顔が大きく歪む。
然し、今は自分のことより悠の心配が勝っていた。
「…大丈夫、これくらい平気だ翼。…早く、悠のところに行かなきゃ…」
自分に大丈夫と言い聞かせて腕についていた管を無造作に取り払うと、翼は病室を出て壁伝いに歩き出す。
幸い自分がいた病室は悠のいる三〇二号室とあまり離れていないらしく、すぐに見慣れた廊下に辿り着いた。
あと少し、あと少しと足を引き摺って進みながら、酷く胸騒ぎがした。
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