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要は病院のロビーで珈琲を購入するとキョロキョロと辺りを見渡した。
何度も来ている割にはこの施設の構造を何も知らないな、と珈琲を片手に壁にあったフロアマップを見る。
すると屋上スペースという文字が目に入って、要は興味本位で行ってるみることにした。
屋上につくとそこは思っていたよりもずっと広くて綺麗な場所だった。
然しベンチ以外には何も無いので人気は全く無く、静寂に満ちている。
外の空気に当たりたい時にはもってこいの場所だと思った。
「ん〜っ、……はぁ」
要は大きく伸びをして、自分の胸の上くらいの高さの柵に腕を乗せる。
屋上は街が一望出来る程の高さにあり、なかなかに景色のいい場所だった。
「結構高いな、落ちたらひとたまりもなさそう」
そう口に出してみて、要は思わず顔を前に出して下を覗き込んだ。
ここから落ちたら矢張り死ぬのだろうか。
その瞬間は痛いのか、苦しいのか、それとも一瞬のことでもう感覚がないのか。
要は不謹慎にもそんなことを考えてしまっていた。
然し、要はそこに恐怖心は抱かなかった。
自分も大分狂ってしまったな、と目を伏せながら自嘲的な笑みを浮かべる。
すると突然、風が吹いた訳でもないのに柵が軋む音が聞こえた。
ほんの僅かな小さな音。
誰か来て、要のように柵に凭れかかっただけなのかもしれない。
それでも、要の意識は完全に音の方向へ向かった。
「ーーえ…?」
そして要の視界に映ったのはーー柵を跨ぐ悠の姿だった。
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